この度、苗木ブランド名および育苗施設名称「Plant Space Vineyard」を展開する(株)北全は、米国ミネソタ大学(University of Minnesota)が育種・開発した以下のワイン用ブドウ品種の苗木を、日本国内で生産(育苗)・販売するために、同大学と商業ライセンス契約を締結いたしました(2025年4月13日)。
左からMarquette(赤ワイン用)、La Crescent(白ワイン用)、Itasca(白ワイン用)の果房。



いずれも最低気温が氷点下30℃前後に下がった場合でも、芽が枯死することなく越冬する。したがって、北海道内の全てのエリアで栽培が可能であるが、醸造に適した果実糖度を得るためには、有効積算温度1,150℃以上の地域が栽培適地とされる。調査の結果、1,300℃以上1,400℃台の地域が主要な産地と想定されるため、それよりも温度が低い地域では、試しに植えてみて、ある程度の生育具合を見てから本格的に定植することをおすすめする。3品種それぞれに耐寒性・耐病性について異なる特性があるが、既存のVitis Viniferaと比較した場合、圧倒的な寒さに対する強さ、病害虫(べと病やフィロキセラなど)への抵抗性があることから防除回数の低減に寄与する品種群である。
詳しい品種解説はこちら。Marquette / La Crescent / Itasca
道内は2000年以降、温暖化の傾向が顕著であり、ヨーロッパ品種が育つ環境に変わりつつある。しかしながら、余市町・仁木町など後志地方の一部や空知地方など、降雪が多く有効積算温度の比較的高い地域を除いて、昼夜寒暖差が激しく厳冬期は凍害の恐れが高い内陸部では、まだまだVitis Viniferaというヨーロッパ品種がうまく育たない地域が多数存在する。ツヴァイゲルトレーベ、ドルンフェルダー、ピノ・ノワールやメルローが思ったように育たない地域の生産者の方には、Marquette。
ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ブランなど柑橘系の白ワイン。リースリングやゲヴェルツ・トラミネールなどのアロマティックな白ワインを造りたいけれど、凍害や積算温度の関係で、やはり思ったようにワインが造れない・・・といった課題を抱える生産者の方には、La CrescentやItascaをおすすめする。昨今人気のオレンジワイン、ペティアン・ナチュールなど旨味系自然派ワイン醸造にも適した品種と考えられる。
[北海道における越冬・耐寒性・栽培適地]
2019年より上記3品種の調査、育苗および試験栽培(大学との栽培試験契約)を順次開始し、その有用性や耐寒性・耐病性などを評価しながら、とくに北海道の寒冷地における適応性を調査して参りました。氷点下20℃前後の寒さでは、たとえ芽が空中にむき出しの状態で寒風に晒されたとしても凍害の影響はなく、翌春の芽の生存率は100%を実証試験で確認。冷涼湿潤気候(ケッペンの気候区分:Dfa)に該当する地域における栽培事例(ワインの種類も含む)を参考に、最終的には市場性(Markettability)が重要で、育てて良し・飲んで良し・売れて良しの三方良しを前提とした。
冬場は氷点下20℃~30℃に下がり夏場の有効積算温度が1300℃以上になる地域が、本来これらの品種が持つ能力がもっとも発揮されるエリアなのだが、その条件にすべてが合致しない地域※でも、可能性に挑戦して欲しい。
※ハーディネスゾーン:Z4~Z8の地域での栽培を推奨
[経済性・社会性]
これら3品種や北米ハイブリッドはV.ヴィ二フェラに比べて耐病性が優れているため、低農薬(特に殺菌剤)で栽培でき、日本(北海道)の気候条件下では優れた耐寒性により凍害リスクが極めて低いことから植え替えコストも抑えられるでしょう。持続可能性(サステナブル)、再生可能な農業(Re-generative Farming)、低介入農業(Low intervention)を実践する現代のそしてこれから新たにブドウに携わる農業者にとって、理想的な栽培品種と考えられる。
弊社の耐寒性ブドウ品種普及プロジェクトは、市場性があり自然環境に与える影響(負荷)を可能な限り少なくして栽培できる寒冷地向けの品種群を今後さらに拡充し、現状の5品種に加え、ワイン・生食用含め寒冷地に適したハイブリッド系の北米品種を2028年までに最大20品種へと拡大する方向で調整している。
当面の間、寒冷地のブドウ生産者を対象とした商品特性のため、また苗木生産能力の関係上、北海道内のブドウ栽培生産者(ワイナリー)を対象に、2026年6月下旬~8月上旬よりポット苗(potted vine)にて納品開始予定。価格は、1本1,430円(ロイヤリティ・消費税込み)~。ご購入に際しUMN品種栽培許諾契約書にご同意のサインを頂きます。※
※ライセンス契約に伴う、自家増殖・転売・譲渡の禁止など。

各品種に関するご質問、苗木のご購入に関するお問い合わせは、こちらのフォームよりご連絡ください。