このVidal Blanc、どこの地域を基準にして耐寒性があると言うのかにもよりますが、少なくともマイナス20℃を下回るような厳寒な地域へは推奨できません。Vidalの耐寒性指数はZone 6(USDA winter Hardiness is zone 6)です。それ以下の(数字が小さい)エリアでは、雪や土、ワラを被せるなどの防寒被覆対策が必要とされています。ちなみに札幌は、10年ほど前はZone 5b 前後でしたが今はもう少し温暖な方向に振れていると思われます。しかしながら、要求有効積算温度も1300℃以上と高めで晩熟ですから、北海道の道東や本州の標高が高い地域で広範に栽培が可能か?というとちょっとまだ難しいと思います。
初期: 新潟県にある岩の原葡萄園創設者の川上善兵衛氏が作出したマスカット・ベイリーAの交配親となったベイリー(Bailey)は、名著 Foundations of American Grape Cultureを執筆したアメリカの代表的な育種家(研究者であり実業家でもあった)のひとり、T. V. Munson(トーマス・ヴォルニー・マンソン)氏によって、1886年にV. Lincecumii × Labrusca × Vinifera のハイブリッドとして育種されたものです。T.V.マンソン氏はのちの個人育種家にそのノウハウ(交配メソッド)含め大きな影響を与えることとなり、亡くなった後もその偉業が後世に伝えられています(Grape Man of Texas :邦訳するとしたらテキサスの葡萄紳士?)。
今日でも当時の著作物(1909年発行)は、デジタルアーカイブ化され入手閲覧が可能なので、興味がある方はお読みになってはいかがでしょう。活字がちょいと小さいですが、書籍版はamazonなどでも購入することができます。実はこのT. V. Munson氏は1895年、当時の帝国大学 農学部 横浜支所へ彼自身が交配した品種穂木を大量に出荷するなど、日本とも非常に関わりの深い人物だったようです。また善兵衛氏は彼から直接ブドウ苗を買い付けていた顧客のひとりでしたが、種苗家 “ 川上 善兵衛 ” としても彼を特別に尊敬していたことから、敬意を表して1902年にはマンソン氏が育種したプラム(すもも)の名前にKawakamiと名付けたという逸話も残されています。 (参考図書: Grape Man of Texas 及び Foundations of American Grape Culture)
低気圧の通過で外は大荒れの天気でも、ハウスの中は静寂に包まれています。Plant Space Vineyardでは、ハウス内のブドウ母樹を十分な寒さに当て完全に休眠させてから穂木採取と剪定を始めます。私どもの場合は11月~12月にやってしまうと、まだ樹が樹液を吸い上げている状態なので、切り口から樹液が流れ出てきます。これは完全に休眠していない状態ですから、人間に例えると麻酔が効いていない状態で、外科施術されるようなもの。