11/22日、まとまった降雪がありました。いちご苗の採苗が終わり、次は試験栽培中の園地でぶどうの樹の剪定・雪の中へ枝を寝かせる枝ふせをして参りました。夏用長靴では、さすがに寒くつま先がかじかんできます。寒く冷たい。
5月に定植した苗木全てを見回りながら、越冬できない緑色の新梢を切っていきます。醸造用ブドウ品種118本+台木品種13本の合計127本です。剪定するのはほとんど緑枝の部分で、登熟した(茶色く木質化した部分)の切除はあまりありませんでした。1年生のものは、メルロー。2年生のものはツヴァイゲルトレーベなどごく一部わずな本数の苗木で余計な登熟枝の剪定にとどまりました。これらは試験的に植えられたものであり、生存していけば接ぎ木用の穂木として枝採りをする母樹となります。
というのも今年2018年は、6月~7月の長雨&低温という決して好ましくない気象条件ということもありましたが、知識と技量不足から植え付けの際5月の乾燥した冷たい風に芽を当ててしまいました。
植え付け前の4月下旬ともなると、苗木が萌芽してしまい(室内でも比較的涼しい場所でしたが)、慌てて準備した圃場に5月1日に植えたのです。土で全体を覆っておけばよかったものの、恐らくこの定植前後の処置が初年度の成長度合いに悪影響を与えてしまったと考えます。
もしくは、ここ北広島市輪厚に近い富ヶ岡という地理的気象条件が大きく影響を与えるものとも考えますが、まだデータ(気象・土壌物理性・土壌成分の化学的根拠など)が十分に取れていないため、原因の特定には時期尚早です。まずは、来年の定植時は焦らず基本的なことに気を付けます。
メルローは、他に比べ萌芽が早い時期に始まる品種で、遅霜が発生しやすい寒冷地には適さないとされています。確かに新葉の展開も早く、言われてみればなるほどそうだなと思いつつ、しかしながら定植後の新梢の伸びやその登熟具合がよく、意外とイケるのでないか・・・と淡い期待も抱いてしまいます。
程よく登熟したといっても、緑枝部分を切り落とすと枝ふせできるほど伸びていない・・・。地際の雪面から上10cmは台木部分、その上50cm前後は春から伸びた登熟新梢です。来年に期待しよう。
実は先月、登録参加している北海道十勝振興局主催の十勝ワインアカデミーのセミナーで、まずは園地の温度測定を!という教授イチオシの一言が頭にこびりついていました。ニューヨーク州コーネル大学農学部ブドウ栽培エクステンション講師のハンズ講師のプレゼンテーションはとても興味深く、耳をダンボのように広げて聞いていた次第です。カナダ国境近くに広がる氷河が形成したフィンガーレイクス周辺のワイン用ぶどう栽培についてお聞きしたわけですが、寒冷地でのぶどう栽培ということで、緯度的にも気候的にも北海道と近いところの事例を学べたことは大変有意義でございました。研究データを地元の生産者にフィードバックしたり、より良い栽培技術を普及するなどして産地をサポートするアカデミックな体制は非常に重要だと思います。
さて、講義の中でまずは畑作りをする前に園地の気温データをデータロガーなどどで取りなさいということでしたので、もう植えてしまった我がぶどう畑に慌ててて設置。冬の最低気温を測り、品種によって凍害になるかならないか、結構越冬できるかも?という不安と期待混じりの勢い任せの栽培体制からデータに基づくサイエンティフィックな方式に変えていきます。ということで、温度測定器をぶら下げてまいりました。寒風・吹雪に晒される地上部と雪の下に埋もれる枝部分に設置。
マイナス気温がどこまで記録されるか、楽しみです。でもあまり下がり過ぎると楽しみでなくなりますが。また夏以降、シカによる新葉・新梢の食害が結構あったため、来年はその対策として電気柵を立てる予定です。