Plant Space Vineyard とは

植栽升を作製中

育苗温室(写真上)のあるこの場所は、かつて建設会社の工場が建っていたところです。天井クレーン、変電所設備などが装備された工場=プラントでした。そのプラントを植物のPlantという意味に置き換え、植物の居場所すなわちSpaceとし、その中に葡萄畑(Vineyard)が広がる(苗木を作るための母樹が植えられ、青々とした葉を茂らせる、その傍らで苗木づくりが行われる場所)という意外性を持たせて、Plant Space Vineyard と名付けました。

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結構立派な鉄骨造りの建屋でしたが、過去の記事にも書いた通り老朽化が激しく外壁モルタルの崩落やトタンが剥がれるなど台風や地震が来れば極めて危険な状態で、このままでは近隣にご迷惑をかけるであろうことは容易に想像できました。

平成14年に当社がこの物件を取得してしばらくは資材庫や作業場として使っていましたが、消防法の関係で消火設備を改修しないと使用許可が下りなくなっていましたし、傷んだ外壁もすべて直すとなると軽く1000万円ほどかかるので、まずは取り急ぎ解体することにしました。できれば、資源を無駄にしないようリフォームして古きものを大事にしたいと考えましたが、オフィスや何かの工場として生まれ変わらせたとして、その後の展開がしっくりこない。屋根だけ残して除雪用のタイヤショベル、トラックの駐車場なんていうことも考えてみましたが、どうも面白くない。最終的にまずは解体という道を選びました。

壊した跡地に建ってみると予想以上に日当たりが良く、朝日から正午の南中高度、西陽が挿し込む夕方までしっかり明るく申し分ありません。これは植物栽培にはもってこいだ、となったわけです。以前の工場建屋をそのまま生かしてLEDの植物工場を構想したこともありましたが、コストをかけてもその設備を減価償却しながら利益を出すビジネスモデルが確立できなかったので、なにかをここで育てるという発想から遠ざかっていました。しかも、ここは準工業地帯であり農村ではありません。

しかし、いざ壊してみると、この自然光を生かして何かどうしても育てたいという気持ちが収まらず、温室を建設することにいたしました。そこで私が何か新しいことを始めるときの行動原則である、規模は小さくてもまずはやってみようの精神。ワイン用ブドウ苗木の生産の育苗研究と、既存のイチゴ苗増殖にも転用できるようプランBも用意して、決して無謀な投資とならないよう入念な事前準備を進めました。実行に移すため、決断を下せるに値するネタを揃えました。また少し離れたところに農地を借りており、先行してブドウの苗木を植えていましたものの、やはり苗木作りにハウスがないと厳しいわけで、建てざるを得なかったのです。

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農村ではなく都会のど真ん中で農作物を育てるという事例が紹介されている。とても興味深い内容。

パリの市街地にもワイン用の葡萄畑があり、ロンドンの工業地帯では、コンクリートを引き剥がし、そこに葡萄を植えてワインを作ろうと奮起しておられる方がいます。そんな事例を拝見し、私もあながちとんでもなく検討外れなことをやろうとしているわけではないと、本の内容にかなり勇気づけられました。というわけで、我がPlant Space Vineyardも無機質な工場基礎のコンクリや陰気な廃屋を壊して、生き生きと植物が栽培される場所へと生まれ変わる象徴的なプロジェクトといえます。サブタイトルは、「工業団地のオアシス」とでも申しましょうか。コンクリ殻は、白く太陽の光を良く反射し光合成を促すのに効果的と思われますので、解体工事の時にモルタル基礎をクラッシャーというアタッチメントが付いたバックホーで破砕してもらい路盤材として再利用しています。以上がPlant Space Vineyardたる所以です。

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