かつての生食用ブドウ園地の整備

先週は、接ぎ木作業が終わり少しホットしていたのも束の間、本業に関わる季節的作業の段取りや調整、コロナウイルスの緊急事態宣言が全国に広がったことで、職場対応に追われていた。幸いにも課長達が素早い判断と持ち前の実行力を発揮してくれたお陰で事なきを得た。また全社員のこのような状況下における協力、頑張りには感謝してもしきれない。

さて、二十四節季でいうところの穀雨にあたる4月19日は晴れて気持ちの良い春の陽気であった。そして暦の通り、翌日の4月20日正午過ぎからポツリポツリと降り出した雨は午後2時を過ぎると本降りになった。

雨が降る前に、昨年から少しづつ手入れを始めた古木の園地を整備したくて畑へ足を運んだ。以前こちらで葡萄栽培をされていた方が亡くなった後は、しばらく放置されていたようで枝は野放図に伸びていた。背の高い雑草に埋もれ、枯れてしまった樹齢およそ20年以上と思われる幹へ、畏敬の念を抱きつつもノコギリの刃を入れさせて頂く。先人の努力と注がれた愛情の分だけ、幹は太くたくましかった。根本付近は枯れていたが、伸びた新梢が地面に着地したところから根が地中へと潜っており、引きはがすのに少々の力を必要とした。必死で生き残ろうとしていたブドウの生命力がなんと強いことか。一部太くなった枝を切断したあとしばらくすると、樹液が滴り落ちた。一見枯れたと見えたその枝の、ブドウの涙と呼ばれる透明な雫を見てしまうと、なんだか可哀想なことをしてしまったようで、切ない気持ちになる。

先人への敬意を払い、一部の古木から芽を生かしたいと思っている。伸びた枝から着地根が出ているものは、そのままにしても良いだろう。付近には新しい苗木を植えることになるが、新旧のブドウが共生しながら融合する樹園地の設計図を描いている。

雨が降る前に枯れ枝の整理とクローバーの播種が間に合ってよかった。当面は、苗木生産圃場として整備運用する予定であるが、アポイント制で、葡萄栽培家やブドウ生産者向けの見本園、交流・意見交換の場にできればと思っている。

接ぎ木作業

今年もお陰様で、接ぎ木作業を無事終えることができました。冬前に穂木を剪定し、冷暗所で保存しておりましたが、今年は穂木の保存状態がとても良く(接ぎ木作業直前の枝切り口の緑が鮮やか)、発根・発芽率が昨年と比較してどれほどか、結果が楽しみです。

特に北広島市郊外の自社畑で育てた台木と穂木の接ぎ木苗(北海道の寒さで鍛えた台木と穂木)の生育に注目です。#Hokkaido Grown

樹液の玉

 フィロキセラ耐性のある品種を自根挿し木育苗しています。加温容器や室温常温管理下で発根・発芽し、無事鉢上げ工程まで進みました。

 現段階では、数節伸びて、葉裏や新梢の表面には透明で光り輝く小さなプチプチした玉が現れています。「真珠玉と呼ばれ、新梢が旺盛なところに分泌液が球状に固まる」とされていますが(小林和司著、育てて楽しむブドウ栽培・利用加工、P12)、英語ではGrape Pearl(ぶどう真珠)または、単刀直入にSap Balls (樹液玉)と呼ばれ、前者は宝石のような呼び名でなんとも美しい表現です。

 ぶどうを栽培して、初めてこれを見たときは得体が知れず虫の卵でも産み付けられたかと勘違いしました。改めてGoogle検索してみると、アイオワ州立大学の学外講座サイト内に、樹液玉に関する記事を発見、閲覧することができました。記事内容の使用許諾は必要ですが、記事へのリンクは歓迎するとありましたので、以下リンクを貼ります。

Grape Pearls – Weird sap on the vine
By Donald Lewis, Department on Entomology
https://hortnews.extension.iastate.edu/2009/6-3/grapepearls.html

 この現象が見られれば、私としてはまだ苗木として弱々しさは残るものの今後の成長がある程度保障され、挿し木または接ぎ木が成功した最初のサインと見なすことにします。発根した根が順調に伸び、新梢の先端までしっかりと樹液が上がるほどに根圧も高まっている証拠で、成長に必要なもしくはそれ以上の栄養分が成長点細胞に送り込まれ、余剰分が表面に分泌液となって現れると解釈します。

バイオダイナミック的にも、今は月が4月8日の満月に向けて満ちていく過程(しかも、なんとスーパームーンで月が1年で最も地球に接近する)※、つまり海の潮力も最大に増す時期で、すなわち地球上の水分が地上部へ引っ張り上げられるから樹液も自然と上昇し易い。それを狙って鉢上げを行ったわけですが、さぁこれからの成長がどうなるか楽しみです。

※「月と農業」中南米農民の有機農法と暮らしの技術、出版社:農山漁村文化協会(農文協)が大変参考になります。特に雨の多い日本では、ワインぶどうの収穫も、この本に書かれている内容・法則を理解し参考にすれば、より凝縮した果実を得ることができ、良い醸造につながるのではないでしょうか。