ポット植え苗木はいかが?

ブドウ苗木
不織布ポットでハウス内育苗した接ぎ木苗(写真手前)

手前の不織布ポットに植えてあるものは昨年試験的に自社にて接ぎ木・育苗したものです。(奥の果樹用黒プラスチック鉢に仮植えしてあるのは、今春業者さんから購入したもの)

次の写真は、購入した同じ1年ものとの比較です。新梢の太さは、手前のポット苗も遜色なく実用に耐える品質。根長はさすがに本州の露地ものには敵わないですが、根量が豊富になる※この生分解性不織布ポットごと納品させて頂き、定植可能となれば、市販化を検討します。ただコスト的には、資材としてポットの仕入分が料金に加わりますので、その価格設定にご了承いただくことが前提となります。
ハウス内育苗にも使用しているこの不織布ポットは、苗木ビジネスが盛んなアメリカ・オレゴン州のメーカー、Rootpouch。原料には資源ゴミであるペットボトルが再利用されており、しかも生分解性のもは土に埋めれば3〜4年で分解されるのでとてもエコロジーな資材。当社の事業ポリシーの一つである“地球環境への負荷をできる限り小さくする”という理念に基づき、石油化学製品の使用を抑え、いかにサステイナブルな事業構造にするかも大事な要素となっております。

※一般的なポリポットに比べ、通気性に優れるため根量が豊富とのこと。

奥の一般的な接ぎ木苗の新梢太さと比較しても遜色ないポット苗。写真手前
品種ゲヴェルツトラミネール、台木は5C。

接ぎ木苗を購入された方であれば、ご存知の通り露地で1年間養成されて掘り上げられた苗は、確かに太い主根(着地根)の根長は20センチ以上あるものの全体的なボリューム感である根量はさほど無いことにお気付きのことと思います。スカスカと言うと、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、意外と一本あたりのふさふさ感はありません。
一方で、rootpouchで育てたリースリングの接ぎ木苗が下の写真です。

2019年4月に接ぎ木し、同年10月に根の状況を確認したところ根長は10〜15cmほど。仮説ですが、ボリュームも十分ですから定植後の土壌水分吸収も容易にできると思われます。しかも、葡萄畑に定植される際もこれくらいコンパクトな根鉢であれば作業も楽でしょう。ちなみに使用した鉢の大きさは、1リットルサイズです。ただし、通気性が良い分乾きやすいですから、ハウス内では水やり管理を徹底します。

イチゴ苗の育苗設備更新

2013年から始めた「すずあかね」というイチゴの苗づくりも今年で7年目。ハウス内のインフラが大分老朽化してきましたので、今年は苗床基礎と給水設備、天面や裾のビニールや防虫ネットの張り替えを実施。苗定植まで作業に追われる日が続きます。

資材を美唄市農協さんへ引き取りに。菜の花畑が綺麗です。

畑の巡回 5/16/2020の様子

フォローしているFacebook上では、数日前から余市や仁木町の葡萄畑、ワイナリーの萌芽お便りが届き始めています。台木の採取以来、まったく足を運んでいなかったサテライト圃場(通称 Hokkaido Pine Ridge Vineyard) の様子を見に行って参りました。以下写真でご報告します。

山葡萄
畑の脇に自生する山葡萄。葉が開き花芽が見えています。
リパリア
台木の中では、一番早く出芽するリパリアの芽。
ツヴァイゲルトレーヴェの芽の状態
十勝ワインさんの山幸。芽吹きの早さはさすがです。
生食用ブドウの芽の膨らみ。ピンクがかっています。
元々植っていたもので、樹種不明。実がなってみないと分からない。

早々にも第一回目の株元の草刈りをしなくてなりません。

肥料焼けその他からの回復力

復活した挿し木
生育不良で廃棄寸前の穂木を挿し木

挿し木後1〜2ヶ月前後の幼苗木にとっては、規定の希釈倍率以上に即効性液肥を薄めたとしても、生育ステージ初期ということで肥料焼けを起こすことが分かりました。発根発芽を促す最初の期間を、バーミキュライト主体の無肥料培地で1ヶ月ほど温存されていて、ようやく数枚の展開葉が現れてくると、ついつい焦って肥料を与えて早く大きく育てようと欲が湧いてきます。しかし、養液灌水後の土壌溶液濃度が発根したての根にとって濃すぎる場合、土壌→根細胞に染み込む浸透圧のバランスが崩れてしまいます。つまりは、根から培地へ水分が逆流し、水が吸えないことから新葉がてんぷら油で揚げたパリッパリの大葉のようにしわくちゃになってしまう失敗(肥料焼け)を経験して生まれた標語は、上の写真 “NO Chemical Fertilizer” at this time!

肥料焼けの現象は、初期の段階では葉が下方裏側に内巻きになり、その後、先端部からの新芽展開葉がちりぢりになって開きます。恐らく酷いものだと成長点組織細胞が脱水状態となり退化、そこで成長がストップしますがすぐ下の節間から新しい芽が出て来ますから、焦る必要はありません。失敗も2度経験しますと確証に変わります。なお、肥料焼けは緩行性の粒状肥料でも起こりますから、挿し木後2ヶ月以内は控えるのが無難で、追肥するにしても相当薄めて与えるか、鉢上げの段階で肥料成分入り培養土のみにするのがよいと考えます。乱暴なことを言いますと、栽培専門書などでは基本的にブドウにはあまり肥料をやるな!ということが書かれているわけですが、果実を採るためのブドウ栽培と苗木を育てるための肥培管理や育て方というものは、やはり得たい結果が違いますから、当然プロセスも異なるわけです。今後は要肥料設計という課題が産まれました。

ちなみに、この鉢の穂木は発根・発芽の後期に、芽の徒長を防ごうと思ってLEDライトを近接照射したところ、思いのほか発熱する器具であったためその熱で芽を焼いてしまったものです。廃棄するか迷いましたが、もったい無いので、適当なサイズのポットにて寄せ植えして養生を試みたところ、副芽が成長し復活しました。

今後の気候変動にも適応するため、また北海道の場合は、凍害や品種毎の要求積算温度の不足による課題が多く残っていますので、適正な品種選択を地域ごとに行う必要があります。既存欧州種、欧州交配種、欧米雑種の中から(より多くの選択肢の中から)産地の気候に合わせた適切な品種をセレクトをすることができれば、北海道のワイン造りはもっと面白く、可能性が広がっていくことでしょう。育苗しやすいということは、苗木の需要増加にも対応しやすく、またぶどう生産農家の方にとっても栽培管理が容易で(さほど神経質にならなくても)しかも高品質なバリエタルワインが造れる品種となれば、産地貢献という事業発足のミッションを高次元で達成できるのです。何よりも栽培時の防除負担や資材節約、環境負荷の低減を実現しながら、農業生産活動を行っていくことが時代の潮流となっていくことでしょう。もっとも、農業が近代化する以前は、今よりも当たり前に再生可能な方法(農法)で作物が栽培されていたはずですが・・・。農耕の歴史は、ある意味自然からの搾取と見られる場合もある。収量と農地の環境状態をどう維持し、地球環境とのバランスをどのように取っていくか。

さて、今回育苗初期の段階で、その適応力・生命力の強さに感心させれたわけですが、副芽のバイタリティがすごく、さらに頂点の芽がやられてもすぐに見切りをつけ副枝が出てきて、頂芽が退化するのを横目に、やがて立派な主枝を形成する軌道修正力、強さは素晴らしいとしか言いようがありません。副枝が出るという特性は、どの品種でも同じかもしれませんが・・・。(当該品種は、副梢が発生しやすい特性があることが、後に判明)

 

まだまだ細いが、順調に挿し木育苗中。
ポット養成中の試験栽培品種