Vineyard Report (July 31, 2020)

今年は雨が少なく、天気の良い日が続いています。朝方は半袖だと涼しく感じましたが、10時頃から太陽がギラギラと照ってきて、日中は30℃近くまで気温が上がりました。午前中はハウスでイチゴ苗の世話、事務所へ戻り請求書等経理業務。午後は暑いながらも畑の草刈り&ブドウの手入れに出かけました。標高80mの高原地帯にあるサテライト圃場は、平地から比べて1℃ほど涼しく吹き抜ける風も爽やかで作業する人間には優しいのです。

写真にはありませんが、2017年ポット室内養成し2018年畑に移植したシャルドネとツヴァイゲルト・レーヴェは枝も太くなり、今年は果実を付けさせています。シルヴァーナも新梢伸びは申し分ありませんが、今年も切り戻しをして枝づくりをしています。昨年は10月中旬で有効積算温度が1200度を超えましたが、なんといってもここは、北海道石狩南部寄り。気候的にはフランスのボルドーというよりは、シャンパーニュか北部アルザス地方などというと、なんてキザでカッコつけた奴だ、と嫌われてしまいそうな表現である。そうおっっしゃるならば、どちらかというとカナダのノヴァスコシア地方または、アメリカ合衆国マサチューセッツ州あたりというのはどうだろう。できれば、ニューヨーク州北部あたりで手を打ってもらいたい。うむ、夜に文章を書いていると妄想に拍車がかかるので、例え話はこの辺で終わらせよう。

さて、火山灰土壌に適応した台木は、驚くほどの勢いで育ってきました。グラウンドカバーとして植えたクローバー🍀(シロツメクサ)の海を泳ぐように枝が伸びていきます。

2019年に定植したケルナー、リースリング、ピノ ・グリ、カベルネ・フランも枝づくり中ですが、新梢の伸びが好調です。ゲヴェルツトラミネール、ピノ ・ブラン、ソーヴィニヨン・ ブランは残念ながら不調。それでも、雪の少ない昨シーズンの冬を思えば凍害で全滅するかと悲観した割に意外と元気そうで、厳しい冬を生き抜いた品種がそれなりにあって、その生命力に感動したりするわけです。明日も暑くなりそうです、水分補給して頑張りましょう。

ワイン用ブドウ苗木のハウス育苗

 初期生育の旺盛な株は、葉色が薄くなってきました。予め培土に含まれていた元肥が切れる頃なので、追肥のサインと察します。挿し穂の熟度により、鉢上げのタイミングもずらしており、当然根鉢の張り具合(成長ホルモンの合成、根の浸透圧に差が出る)や新梢の伸びが遅れているものもあります。全体の成長をそろえるために、窒素とリン酸含有比率や肥料融解速度の異なる環境分解型肥料を追肥しました。それぞれの成長に合わせ、使い分けます。

7月末迄に全体の新梢高さを揃える管理をし、8月〜10月は樹幹となる主枝を太らし、翌年に向けて芽や枝内部にタンパク質などの養分を蓄えてもらう計画です。
6〜7割方の株が、目標とする新梢の長さ(高さ)150cmに達しておりますので、それらの副枝の頂芽を欠くなど(葉は1枚だけ残す)、摘芯・摘葉の毎日。7月に入り気温上昇とともに葉からの蒸散量も増えるため培地が乾きやすく(通気性に優れた鉢を使用していることもあり)水やり回数は朝・昼の計2回たっぷりと与えるようにしています。

ラブルスカ種から造られた辛口美味ワイン “ナイアガラスパークリング”

ナイアガラスパークリング
ベリーベリーファーム(北海道余市郡仁木町)さんのナイアガラ・スパークリング。

 北米東部に自生するヴィティス・ラブルスカ(Vitis labrusca)の交配種(交雑種)で、なじみ深いブドウといえば、やはりナイアガラです。インターネットが普及しオンラインショッピングが今ほど発展していない黎明期には巷のスーパーで手に入るナイアガラワインは甘いものが多く売られていました。当時自身も20代という若さで、ワインの味も違いも大して分からず、ずいぶんと甘ったるいものだなぁと感じたものです。(当時は、残糖感を残すために発酵を途中で止めるなどということも知りません)

 時代を反映した嗜好の変化でしょうか、近頃は辛口で食事にも合わせて美味しいラブルスカ系統のワインに多く出会うようになってきました。ベリーベリーファームさんのナイアガラ・スパークリングもその一つ。シュワッと泡の効いたスパークリングで、凛とした辛口に仕上がっており、真冬は窓から雪景色を眺めながら暖かい部屋の中で鶏肉の水炊き、豚しゃぶなどの鍋にベストマッチ。オーガニック栽培で育てられた葡萄やその環境、造り手さんの思想やこだわりに想いを馳せながら、ありがたくいただきました。そして、季節が変わり暑くなってくると再びこのスパークリングワインで喉を潤したくなってきます。
 近年、日本ワインは欧州品種(Vitis vinifera)の全盛(気候変動に伴う産地の北上、時代の流れ)で確かに美味しく、多湿多雨な温帯モンスーン気候、冷涼湿潤なハンディがありながらもヨーロッパやニューワールド(アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドetc)のワインに引けを取らない素晴らしいワインが醸造されるようになってきました。北海道もカナダ東部やアメリカ・ニューヨーク州のフィンガーレイクスなど寒冷地のワイン産地の一つとして、世界からも一目置かれているようです。Vitis vinifera と labruscaは対局にあることは理解しつつも、片意地張らずに気軽に飲めるものとして、ラブルスカ。選択肢の一つにあってよいのではないでしょうか。なぜか分からないけれども、安心感や懐かしさを感じました。

ロゼの氷割、乾いた喉を潤す衝撃の美味さ。

町民用ロゼワイン
十勝ワインの「町民用ロゼワイン」を氷を入れたグラスに注ぐ。

先日の北海道新聞に掲載されていた記事を読んで、無性に飲みたくなってしまい、紹介されていた飲み方で飲んだら本当に美味しかった。ワインを氷で割って(この場合はロック)飲むなど、許されないことだと(氷だけに冷ややかに)思っていたが・・・。
昨今は、ヨーロッパ醸造用品種(Vitis vinifera)から醸造されることが多くなってきた北海道(日本)のワイン。従来はこのロゼワインの原料であるキャンベル種やナイアガラ、コンコードなど北米原産種またはそれらをベースとした交配種が主流であった。甘く仕上げられるものも少なくなく、食事には合わないと敬遠していたものだが、この辛口のロゼワインを氷で割って飲むとネガティブな印象は一気に吹っ飛ぶ。適度な酸味とキリっとしまった辛口で実に美味い。夏の蒸し暑い日は、ビールではなくロゼロックが私の定番になりそうである。和洋中問わず、脂っこい食事には確かにうってつけの爽やかさで、いくらでもグビグビ飲めてしまう。さっそくスーパーでまとめて3本ほど買ってしまった。
町観光協会のWebサイトでも紹介されている「十勝ワインのまち池田町伝統の飲み方」が、私的にはアフターコロナのニューノーマル(夏の飲酒スタンダード)になりそうである。