ぶどう畑で見かける虫

ジョウカイボン科の甲虫

この畑でも、御多分にもれずテッポウムシ(ここでは、カミキリ虫やゾウムシの幼虫と定義しよう)の被害がある。7月以降、ぶどう樹の根元付近からおがくずが出ていると思ったら、枝の髄がかじられ、横穴を開けられる始末。

畑でよく見かける上の写真の虫は、カミキリ虫のように見えるが、そうではなかった。通称、ジョウカイボンと呼ばれ、ホタルの仲間だそうだ。食性も肉食で、丈夫な下顎で小さい虫などを捕食するという。つまり、益虫である。もしも、ウィルスを媒介するダニやアブラムシを食べてくれるのならば、イチゴ苗のハウスで飼いたいくらいだ。ついでに、葉っぱを食べちゃう芋虫も、平らげていただけると有難い!

あっ、そういえばこないだハウスの通路で、アリが2匹力をあわせて生きたアオムシを、連行するかのように運んでいた。そのアオムシは、多分ブトウの苗木の葉を食べていた犯人だ。弱肉強食の自然界は、人間が手を加えなくても、実にうまく機能している。

シカの食害

無惨にもかじられた新芽

今年は、ぶどう畑に害獣避けの超音波発生器を設置するのを失念していた。てっきり、チョッキリ虫にやられたかと思いきや、新梢ではない固い枝先が咀嚼されたものも発見したので、シカによる食害と判明した。後日、蹄の跡が地面に残っていたので、そういうことであった。超音波発生器の設置後も、被害が収まらず従来の電気柵を張り巡らすことに。エリアによっては、かなりの新梢を食べられてしまったので、今年樹幹作りが完成する予定が、1年遅れることになりそうだ。実に切ない気持ちになったが、まぁ、起きてしまったことは仕方ない。

ちなみに、例年この畑でチョッキリ虫が現れるのは6月下旬から7月の始めにかけてなので、随分と被害が出る時期が早いものだなぁと思っていた。

凍害、病害、虫の害など栽培者を悩ます事がらは、圃場によって異なると思われるが、ここでは、もっぱらシカ対策が最重要事項になりそうである。

ここ数年は、近隣でメガソーラーの建設により原野が切り開かれていた。その工事騒音に伴い、シカが出没しなかったのかもしれない。一時、クマが出たこともあったから、それも影響していたか?なので、ちょっと、油断していたのである。

それにしても、再生可能エネルギーの一つとしての太陽光発電。ある電力会社の説明文には、「発電に化石燃料を使用しないため、二酸化炭素の排出を抑制できます」と書いてある。だけどさ、隣りで建設拡張中のメガソーラーは、森林を伐採しまくって、地面を剥き出し丸裸にしてまでソーラーパネルを設置している。炭酸同化作用のある樹々をなぎ倒し、炭素が固定されていた森林の土壌がほじくり返されている。虫や鳥、シカやネズミなども生息環境を奪われたことだろう。原子力発電に比べれば、危険性は格段に低いかもしれない。しかし、何が二酸化炭素の排出抑制なのか?馬鹿じゃないのかと言ってやりたい。

ソーラーパネルを新規に設置する場合は、条例ですでに開かれた他に利用価値のない土地、建物の屋上などに限定し、森林を新たに伐採してまで建設を進めるような事業者には建築許可申請を出さないようにすべきである。森は、蒸散による大気の冷却効果もある。政府は、温暖化対策がどうのこうのとスローガンを掲げているが、その足下で貴重な資源が失われている。そして北広島市よ、今後は市街化調整区域での開発をこれ以上容認するべきでない。札幌近郊で、今までこれだけの里山が残されているのは、奇跡とも言える。しかし、特に近年は開発が進み、林野部が大規模に失われている。街が活性化するのは、好ましいことだけど、人口減少時代にこれ以上、市街化や工業団地の拡大は、不要ではなかろうか。納税事業者として、改めて強く抗議する。一体どれだけの景観が損なわれたというのか。こうなってくると、最後の手段としては、手付かずの林野部を保護するために、個人所有の土地に関しては買い上げて永久保存するしかない。そうしたら、多少はクマもシカも生活圏を追われることもなく、出没しなくなるだろう。私財を投じ、基金創設だって考える必要が出てくる。

市内ど真ん中に、野幌原始林があり竹山高原温泉、輪厚、仁別・島松から空沼岳、札幌岳、恵庭岳、漁岳など支笏洞爺国定公園へ続くルート。札幌方面へは、清田区有明へ繋がり、滝のすずらん国立公園にも通じる広いエリア一体を、なんなら国立公園指定するくらいの価値がある。この辺も、裾野にカントリークラブがいくつかあるものの、広大な陸上自衛隊の演習場があるから、現在も開発の手から逃れることができているのだろう。こうなってくると市町村をまたぐから、知事クラスの権限が必要になってくる。これくらいのスケールで物事は考えるべきで、2030年に札幌に再び冬季五輪を召致するなど、全くもって論外だ。貴重な血税は、他にも資するべきものがあるはずだ。日本ハムファイターズが使用しなくなってしまった札幌ドームの維持管理費や活用はどうするのか?後世にツケを回す札幌市政にも文句がある。もっと長い目で俯瞰できる知性と良識ある経営感覚に優れたリーダーは、いないものだろうか。

ところで、ソーラーパネルのリサイクル化はどれほど可能な状況なのだろうか?いずれ大量の産業廃棄物として丸々埋め立て処分なんていうことになれば、再生可能エネルギーなどと言えたモノではない。シカの食害から、随分と飛躍した話しをしてしまった・・・

菌根菌の香り

根の周りにびっしりと張り付く、菌根菌の芳(かぐわ)しき香りを味わったことは、あるだろうか?

地上部が無くても、根だけが伸びて生き延びる驚異的な生命力。

温室では、人工培土でぶどう苗木の栽培床を作っているのだけれども、苗木を掘り取る際にどうしても千切れて、土壌中に取り残されてしまう根っこがある。4月上旬、その根っこを葡萄の落ち葉や完熟した鶏糞、牛糞、バーク堆肥、菜種油カスなどと一緒に培土にすき込む。それらは、含まれる肥料成分と残効の度合いも異なるので、目的に合わせてブレンドする。散水もして、微生物が活性化するように適度な水分を保ちながら、たまに切り返したりして、放置すること1〜2ヶ月。土壌を発酵させるこの期間は、実は紫外線による培地の日光消毒も兼ねている。

チーズカビのような香りの菌根菌

2ヶ月ほどして、定植の時期がやって来る頃には、どうやら根の周りに共生する菌根菌はとても芳醇な香りを放っていた。糸状菌の一種なのでしょうか、粉状にまぶされたように見える菌類を、根からこそぎ取るように指先で擦る。すると、まるで熟成したチーズカビのような香りを味わうことができた。嗅覚からは、塩気すら感じるほど、まさにそれはチーズそのものを食べているような錯覚に陥ったのであった。実際に根をかじって食べたわけではなく、鼻で味わったのです。

根の養分吸収にとって、この菌根菌の果たす役割はとても大きい。(以前私は、菌根菌とはマメ科の根に生息して、窒素固定だけをするものと認識していたので、せっせとクローバーやヘアリーベッチの種を蒔いたものだった。)根が吸収できるリン酸の量は、微量でありやたらと施肥をすればよいというものでない。特に今年は、世界情勢による化学肥料の値上がりが、尋常じゃない。肥料成分うんぬんに頼る前に、土中のリン酸などの養分吸収や根の成長、耐病性にも寄与する極めて重要な根と菌根菌が織りなす根圏のWin-Winコラボな世界を今一度、理解し見直してはどうでしょうか?土壌菌類、土壌微生物学はとても奥が深く、非常に興味深い分野です。

2022年は、緑肥、発酵鶏糞、牛糞、ボカシ肥料などが改めて注目されるのではと思います。