秋の深まり

Fall Foliage
温室の中も紅葉シーズン

 毎年思うのだけど、まだハロウィーンも終わっていないというのに、「クリスマスケーキの予約受付中」というのぼり旗が、コンビニの店頭にはためいていた。年賀状の案内なども、すでにJPから郵送されてきたりしている。商業的には、どうしても準備の関係もあり、季節先取りは致し方ない。

 まぁ、でも、ゆっくりと今を楽しもうではないか・・。スクリーンハウス(温室)の中の、ブドウ達も来たるべく冬に備え、紅葉シーズンを迎えた。初夏の青々とした若葉も、生命力が溢れ、こちらの気分も高揚する。しかしまた、この緑から黄色に変わる秋の風情は、静かで、はかなくも美しい。そのハッとする鮮やかさに息をのみ、まるで心が洗われるかのような気持ちになるのも、よいものだ。

 希望と不安が入り交じり、未来に期待を寄せる10代~20代、壁にぶち当たりながらも必死で仕事に向き合う血気盛んな30代。30代後半では、自分なりの答えを見つけ、突き進む。40歳前後には、10代後半に経験したような期待に胸を膨らませ、高揚感に満たされる(第二の青春というらしい)エネルギッシュな局面に再び出会う。
 そして、ある程度の成功と失敗を経験し、知っている・思っていることと実際の行動や出来ることとのギャップ、真実に気づけなかったかもしれない自分に落胆し、悟る。イケイケどんどんで勢いづくあまり、何かこう地味だけど大切なこととか、影で自分を支えてくれていたであろう人の有り難みなんかも見えなくなってしまうのかもしれない。しかし、それほど盲目になって情熱を燃やさないと、得るものも得られない。人はまったくもって不器用だ。そういったことが後からじわりじわりと分かってきて、ようやく仕事人としてのベース(プラットホーム、またはオペレーションシステム)が出来上がる。年を重ね、成熟した大人へと新たな(次なる)人生の階段を昇り始める40代も、悪くないかと思えるようになってきた。

 さて、日夜寒暖差、外気温の低下にともない、苗木たちは樹体内に糖分を蓄積し、枝の硬化(木質化)スピードを加速させる。耐寒性の極めて強い品種は、糖やデンプン濃度を段階的に上昇させ細胞壁の外へ水分を追いやって、厳寒による凍結・幹割れなどの凍害から身を守るらしい。

 この冬期順応期間中には、成長ホルモンのオーキシンなどを阻害する物質も生成するという。そして、その阻害物質は春の芽吹き前には、自然消滅して、萌芽が始まるそうだ。この辺は、休眠打破と密接に関係していると思われるが、これらの植物的メカニズムを理解することで、適切な穂木の採取時期を見極められ、冬支度が準備途中の未熟な枝をストックしてしまうという過ちを防ぐことができる。また、接ぎ木や挿し木のタイミングを見誤ると発芽・発根不良につながってしまうのは、温度・湿度・水分や技術的な要因以外に、時期的なものも影響すると考えている。

 Fall colors in the PSV screen house. Fall foliage is seen on propagated mother vine tree of cold hardy wine grape. The temperature is decreasing day by day. It is a sign of starting ready for cold acclimation and winter survival. Natural beauty, isn’t it?