ブドウ栽培に限らず、モノゴトは全体の7~8割方うまくいっているときが一番危ない・・・ような気がする。
さて、鳥による食害が後を絶ちません。先日、防鳥ネットを仕掛けたものの、隙間から入って食べられ続け、1~2割が残る状況。検体(果実糖度と酸度を測定するための収穫サンプル)として最小限必要な房は網の袋で養生し、防鳥ネットの隙間を念入りにふさぐ。野鳥さんのお腹をだいぶ一杯にしてしまった・・・。
異例な暑さ続き べレーゾン早まる!?
長野県や北海道内各地では、ブドウの果実が色づき始め硬かった実が軟化を開始するべレーゾンの時期に入り始めた。お盆を過ぎても、依然として暑さ収まらない記録的な猛暑に見舞われている北海道(というか全国的に)、この異常な気象状況がこれから収穫を迎えるブドウ果実の品質にどう影響していくのだろうか。
さて、栽培試験をしている耐寒性早熟ワイン用ブドウの様子というと、なんとお盆明けの8月18日の圃場巡回時、とある赤ワイン用の品種は一週間前までは緑一色だったのに、すでにピンク、薄紫に色づき始めており日当たりの良い枝にぶら下がった房などは真っ黒に変わっていた(下の写真。良~くみると、すでに鳥に食害された跡が・・・)
この品種は、原産地の北米地域において8月上旬~中旬にはべレーゾンが始まり、9月中旬から下旬にかけて収穫されるため、日本のお盆時期に色づくことが確認できたことで、比較対象の原産地と限りなく同等のパフォーマンスが得られるかもしれないという期待を寄せてしまうのだけれど、これが今年の異常な夏の暑さによるものだとすると大手を振って喜ぶわけにもいくまい。地球よ大丈夫か!
そして8/23、なんとようやく熟し始めたばかりのブドウが鳥に喰われるという被害に遭っていたのである。全体の3分の1ほどの房が被害にあっていただろうか。ショックと焦りが入り混じる心境の中、急きょ、防鳥ネットを買いに北広島市大曲にある最寄りのホームセンターへ車を走らせた。(下の写真:食害にあったブドウの房)
夕方の5時過ぎだというのに、気温が30℃近くありとても暑い。汗だくになりながら、防鳥ネットを展開し垣根に掛けていく。お盆を過ぎた北海道の夕暮れ時とは思えない暑さと湿気が、気力と体力、水分を奪っていく。
しかし、このまま放っておけば全てのブドウが食べられてしまうだろう。今年は出荷するわけでもなく、ワインに仕込むわけではないけれど(あわよくば試験醸造にこぎつける期待も、にじませていたが)、収穫時の果実を評価しこのブドウを交配作出した大学の研究部門に提出するレポートのためのデータが取れなくなってしまう。6月以降、病害も発生せず順調に生育してきたので、なんとしても果実を守らねばならなかった。
頭上を飛び回るヒヨドリ?(キーキー鳴く鳥)だと思うのだけど、ひと気のない畑で周りにエサが乏しい場所では鳥害にあってしまうのか。実は、以前から食べ頃になった生食用のブドウが何者かに喰われるという謎の事例があり、低い位置に果実が成っていたのでアライグマか何かの仕業だろうと思っていた。
今日も朝イチ、園地の巡回に行くと防鳥ネットを張っていない部分の垣根の脇から鳥が勢いよく飛び立っていった。犯人は、鳥だったということになりブドウ畑の環境によっては、鹿以外にも害獣対策が必要になることが分かった。道内のブドウ畑では防鳥ネットを掛けるということをまだ聞いたことが無いが、皆さん無被害なのだろうか。
今回被害にあったブドウは、ハイワイヤーコルドン、またはトップワイヤーコルドン仕立てで管理しており、フルーティングゾーンは地上から150cmほどの高さにある。ゆえに鳥の目につきやすく、果実をより熟させるための葉欠き(Leaf thinning)を行った後には、果房がむき出しになる(一番上の写真)。
今回、防鳥ネットをかける必要に迫られたが、別のエリア(若干人の出入りが多い)で、同様の仕立て方で別品種(山幸)の果実を成らせたときは無被害だった。立地なのか、少し早く色づき始めたからなのか、暑くて鳥も喉を潤したかったのか(まだ糖度も上がっておらず酸っぱいのに)、こればっかりは当該品種の普及活動に精を出し、栽培事例が増えないと何とも言えない。低農薬・省力化・省資源で栽培可能な品種でもあり、人にも地球にも優しいブドウ栽培を実現できることに疑いの余地はないのだが、防鳥ネットを収穫直前まで掛けておくひと手間が必要になるかもしれない。