蒸し上がる北の大地

PSV園主の勝手に洞察考察

La Cresecntの葉
お盆の頃になっても、べと病や黒とう病被害が皆無に等しい耐病性品種※

※写真手前がLa Cresecnt、奥がItascaの葉が生い茂っている。(札幌市内の実験圃で8/12に撮影)殺菌剤は、Itascaのみ7月下旬にボルドー剤を軽く散布。コガネムシ対策(葉の食害)で、殺虫剤を1回だけ散布している。

 2025年7月中旬頃まで、極めて雨の少ないシーズンを迎えていた(道央の石狩管内)。晴天日も多く気温の高い日が続いたため、イチゴ苗の育苗ハウスでは例年よりも多く寒冷紗を掛けたりはがりしたりするなどして、過剰なランナー先焼けを防いでいたほどである。

 一方、ブドウの苗木ハウスは天面が高くベンチレーション(換気設備)も備わっているため、いちご苗のハウス内ほど高温には従来ならなかった。しかし、今夏はさすがに暑い、暑すぎる。天井が高い構造もこの時とばかりは不利に働き、外側に寒冷紗を掛けることが作業的には現実的ではない。また予算の関係で内部に日よけの設備も設けななかったので、今年は灼熱の太陽が照り付ける日中の気温は、40℃を超えた。日陰になっている株元でさえ30℃前後という有様である。(ハウス内部は、簡易的にエスター線を張り巡らして、その上に寒冷紗をかけられる状態にはなっているが、母樹はエスター線よりも高い位置まで枝葉が伸びてしまう)

ハウスブドウの株元

 そんな過酷な状況でも、多少の葉焼けがある程度でブドウの樹は元気に育っている。今年は、La Crescentの果房がとてもきれいに実をつけており見ごたえのある姿に感嘆する。しかしながら、実を採るための樹ではないので、あくまで酸と糖度のバランスを観たり果房のカタチを記録するのに留める程度である。

La Cresecnt果房
La Cresecntの果房(ハウス内部)

 さて、7月下旬以降は暑さそのままにまとまった雨が降るようになり、さらに南から暖かく湿った空気が入り込んで蒸し暑さがいっきに高まってきた。蒸し上がる北の大地。それでも、屋外実験圃の耐病性(耐寒性)品種たちは、特に異変を感じさせることなく成長中である。Itascaが黒とう病に弱い反面、べと病に耐性があるとされる一方で、La Crescentはべと病に葉が侵されやすいと言われている。しかしである、黒とう病はおろか今のところ(8/15現在)「べと」にすら被害に遭っていないのである。しかも、殺菌剤が一度もかかっていないにも関わらず。

La Crescentの葉(7/22)
La Crescentの葉(7/22撮影)

この事実から導きだされる鉄則は、

その1:湿度の高い場所は避ける
(Avoid High Humid Location)
しかし、この実験圃がある付近は沢が近くにある窪んだ低地帯でもあり、比較的湿度が高いはずである。それでも葉がキレイな状態を保っていられるというのは、住宅街で回りに畑(農地)がない、すなわち病原体数が極めて少ないので病気に罹りにくいという推測である。風が強いので、風通しが良いことも貢献しているのかもしれない(キャノピーのサーキュレーション効果)。

 また自然緑地の他、家庭菜園、花・樹木など多種多様な植物が植わり特定の作物だけが育てられている農地とは異なり、多種多様の病害虫が共生していて特定の虫、病原体の個体数が突出することなく均衡を保っているということが言えるのではないだろうか。モノ(単一)・カルチャーに対するパーマカルチャーの原理が成り立っているのかどうかは分からない。

その2:適切な防除の実施
(Execuete Spray Programs)
7月に入っても黒とう病(Anthracnose)の症状が出なかったため、殺菌剤は一度も散布していなかった。7月中旬、Itascaのみ葉に黒い点が出だしたため、有機JAS認定のボルドー剤を1回散布。
これら耐病性品種であっても、通常は6月上旬と中下旬にそれぞれ殺菌剤の散布を実施することで、黒とう病に関しては大方その被害発生を初期のシーズン段階で抑えることができる。

黒とう病の初期症状(黒い点)
黒とう病の初期症状(黒い点)7/22撮影

その3:抵抗性品種を植える(べとにもある程度の抵抗性がある)
(Plant Disease Resistant Grapes!)

 雨霧に包まれやすい場所というのは、カビ(mildew)にとってはパラダイスであり、ブドウを植える場所としては避けなければならない。Downy mildewは、べと病。Powdery mildewはうどんこ病という具合に末尾にカビを意味するmildewが付く。一方、Anthracnose(黒とう病)も真菌性の病気ではあるが、真菌の一種を意味する「~mildew」とは表記されない。なぜか?

 

 さて、湿度の高い条件下であっても病原体数が少ない場所では、La Cresecntも「べと病」に対して、抵抗性すなわち耐病性がないと言い切れるのか?つまり土壌微生物や菌類が程よいバランスで生息している圃場の環境下においては、La Cresentはベと病に対して抵抗性を有するということを立証したい。