樹皮の食害レポートその後

シリーズ第2話以降、すっかりその報告と配信を怠っていたので、ここで一挙放送(投稿)とあいなりました。

シリーズ第3話:橋接ぎは成功したのか?カルス形成と樹皮の再生、その兆候は見られるか?
橋接ぎをするための穂木が、またもや野ネズミにかじられてしまったために、
橋接ぎ処置すらできなかったのである。

シリーズ第4話:樹体内に貯蔵された栄養分で、どこまで生き延びるのか

より広範囲に皮がかじり取られた樹は、やはり蘇生率は低かったのであるがその内訳は、以下の通りである。
1.かじられたところより上の部分の芽が出ずに枯れてしまった
2.芽吹いたけれど、展葉するかしないかの段階で枯死しまった
3.まったく問題なく果実を実らせた

1.の樹は樹皮のはぎ取られた表面積が3本の中で最も広く被害が甚大で、樹液の漏出などが一時みられたものの上部は枯死したものと思われる。株元から芽が出て展葉し、小さいながら生きながらえているが、展葉後の伸びが遅く植え替えた方が成木まで早いような気もする。

2.ハイコルドンの短梢剪定した結果母枝から萌芽したが、展葉直前ですべての芽が枯死。水平に両腕を伸ばした容姿となっており、片側8芽×2で都合16芽に水部養分を吸い上げてやらねばならない。1.の樹に比べれば、剥離面積は少なかったが損傷を受けた維管束では十分な水分が送り届けられなかったようである。維管束の再生は叶わなかったものと推測するが、来年の春まで切らずに様子を見てみる。
 しかしである、株元から元気に太めのシュートが出てきたかと思ったら、あれよあれよという間に伸びて、2か月経ったら先端は1.7mほどの高さに達した。直径も大人の人差し指の太さくらいに成長したので、樹幹として十分に機能する。脇芽から伸びた1本をワイヤーに固定して、水平コルドンを作っている。先日などは、花房なるものまで出現したが栄養分は枝作りに集中させたいので、すかさず切り落とした。この蘇生術は、接ぎ木ではできない芸当で、自根苗のハイブリッドならではのお家芸である。ちなみに、この樹はItasca(アイタスカ)である。

3.まったく問題なく果実を実らせた
この樹も、野ネズミさんにはかなりきれいに樹皮を召し上がっていただいたものだが、かろうじて薄く維管束が残されたいたのか(まったくそのようには見えなかったが)見事に、何事もなかったかのように復活した。これは、La Crescentの樹。しかも果実をしっかりと実らせている。

・シリーズ第5話:死の淵を彷徨った挙句の果てに・・・
結果的には、被害にあった3本の樹は死ななかったということになる。再生の度合いには差があるものの、自力で蘇生したのだ。1.は時間がかかるが、2.は来年には水平コルドンが元通りになる(着果は樹の様子を見て判断する)、3.の樹は完全に回復している。。回復に違いがでるのは、剥離された部分の長さ(樹幹の上下幅)と食害の深さによるものと考えられるが、芽(シュート)を出すものと、維管束機能の回復と樹皮形成が順調で、出芽・開花・果実肥大期を経て収穫まで漕ぎつけであろうものとに分かれた。


・夏休み特別編 :奇跡は起こったのか?
1.に関しては、もう駄目だろうと大方あきらめていた。しかし、芽が出て数枚展葉している程度なので安心はできないが、これは奇跡といってよいだろう。地際に大分近いところであるが、必死に生きようとしている。2.も3.の樹も、予想をはるかに上回る回復ぶりで驚いた。

株元から出芽し展葉

June 5, 2026 issue

 八重咲きの芍薬(西洋シャクヤク)を飾ろうと思い立ち、札幌駅前の百貨店に店を構える有名どころの花屋へ出向いた。ちょうどよさそうな枝ものと一緒にほどよく蕾(つぼみ)の状態売られていたものを買ってきたのである。実は、最近知ったのだが、北海道では5月中旬~下旬、6月のあたまにかけて、シャクヤクの切り花が出回るということだった。という記事を書いていたのは6月上旬なのであったが、事務的な仕事を含め目の前の仕事を片っ端からやっつけていたら8月も下旬に差し掛かっている。せっかく書き残していたのだから、放ったらかしにしておくのも、もったいなかろうと今さらながらブログの投稿ボタンを押したのであった。

 店内で売られていたときは、団子のような塊だったものが帰りの列車の中で温まったのか、家に帰りついて花瓶に生けるころには、すこし開き始めていた。そして、翌朝には満開とまではいかないまでも、昨日とは似ても似つかないほどのゴージャスな咲きっぷりを見せつけてきたのだった。

 美しい女性の姿やその立ち振る舞いを形容した「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はゆりの花」という表現があるが、実際にその花を見ていると、たしかに息をのむような魅力的な何かがその花には宿っていた。

 さて、6月はブドウの開花シーズンでもある。弊所の温室では一足先にハイブリッドの耐寒性・耐病性のワイン用ブドウが開花し始めた。

 Itasca(アイタスカ)も、La Crescent(ラ クレセント)同様、花房のキャップ(ピーマンのような緑の包み:上図ギャラリー1番目の写真)が外れ、めしべに蜜が露出して受粉の準備が整うと、品のある高貴な香りが樹の周りに漂い、毎年のことながら私の五感を楽しませてくれる。いずれこの品種が、多くのブドウ畑に植えられれば開花期には、その一帯がこの香りに包まれ、それはなんとも幻想的な空間となって園主を楽しませてくれるだろう。

 6月11日(木曜日)、ブドウ施設とは別の場所にあるイチゴ苗を増殖する圃場を、朝の出勤時に見回った。すると、ニセアカシアの花が満開になっていた。

 ニセアカシアは枝に鋭いトゲがあるので、何年か前に伐倒した樹の後片付けをするときは、ゴムの柔らかい手袋ではその枝にあるトゲが生地を貫通して手指がチクッと痛く、思ったように作業が進まなかった。なんとも厄介な樹が生えたもんだと。しかし、今までその花をまじまじと目の前で、しっかり観察したことはなかった。遠目から見れば房のような花が、ただなんとなくぶら下がっている。しかし、手の届く高さに咲いている花房を、まじまじと見ると、その愛らしい花姿におもわず見入ってしまった。肉厚で立体的な造形の花弁が意外だった。ランの花のような感じで、ひらひらと今にも飛び立ってしまいそうな蝶のようでもあった。