第1章(完)耐寒性試験の終了

踏切
畑に通う途中にあるJR千歳線の踏切で、列車の通過を待つ。

1月9日の投稿から、かれこれ半年近くブログを更新せずにおりましたところ、ご心配を頂いたりもしました。冬の間に昨年の栽培試験結果とりまとめ、それを反映して今後の品種絞り込みや事業としての展開をどうするかなどを考えておりまして、ブログとしてアウトプットするには内容が整理できなかったのです。

未確定要素もたくさんあり、今後数年かけて新たに入手・検証する品種もあります。しばらく時間がかかりそうですが、耐寒性・耐病性ワインブドウに関する調査・研究・育苗試験は、引き続き継続して参ります。すぐに結果が出るものでないため、しばらく開かずの踏切ですがお待ち下さい(笑)。

2016年の夏以降、北海道でワインを造るためのブドウ苗木作りをビジネスとして展開してみようか?と着想を得て資料集めやら栽培現場(ワイナリーのブドウ畑)を見ることから始まったプロジェクトも、今年で5年目を向かえる。ギリギリ30代後半だった私は、ついに40代半ばに差し掛かってしまった!

当時は、苗木不足の真っ只中で本州の苗木屋さんから何か品種を取り寄せようにも、モノによっては2~3年待ちの予約状況と言われ、試しに植えるために入手することすら難しかった。幸いにも山梨県甲府市の苗木屋さんが、販売キャンセルになったウィルスフリー苗をなんとか数本ずつ融通してくれて、大事にポットに植えたのが2017年3月。

その1年後、畑の準備が整い露地での耐寒性を見極める試験を始めた。いわゆるヨーロッパ品種(Vitis Vinifera)と接ぎ木苗を作るのに必要な台木品種をみつくろい、その種類は最終的に、台木が11種類と穂木品種は23種類、総数331株に達した。

数年のうちに事業として踏み切れるか否かを見極める計画であったのだけれど、簡潔に結論から申し上げるとヨーロッパ品種の接ぎ木苗作りは、北広島市の気候環境(露地)では難しいと言わざるを得ない。

ビニールハウス内であれば、何ら問題なく育苗は可能だが、そのためには面積の広いハウスを何棟も建てなくてはならないだろう。私の試算では、まったく採算が取れないことが分かった(本州並みの立派な接ぎ木苗を作る場合)。一番の問題は、積雪がほぼゼロに近い年の冬場(12月下旬~1月上旬)に、マイナス20℃まで下がる内陸性気候ゆえ、穂木を採るための樹が保温剤や地中に埋没させるなどの防寒対策を施さない限り、凍害を受け芽や維管束など樹体内組織網が破壊されてしまうのだ。

2020年の12月~2021年1月の最低気温マイナス20℃により、数年は雪の下で越冬できていたカベルネフラン、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ、ピノ・ブランなどほとんどの種類が枯死してしまった。かろうじて接ぎ木部近くから芽を出したものもあるが、水平コルドンに仕立て途中の枝部分のほとんどが枯死してしまったのである。
それでも台木の9割は生存し、その内4種類は生産性の基準をクリアした。また、穂木として使う品種でなんとかまともに育つのは、シャルドネとツヴァイゲルトレーヴェのたった2種類であった※。

他にケルナーといったものも残存し、当年枝の登熟度合いは悪くはないので、引き続き様子は見るものの望みは薄い。なにせ積雪の少ない当圃場では、後志の暖流効果や空知地方のように真冬の寒さから雪の布団が樹体を守ってくれないから、マイナス15~20℃以下の冷気にいとも簡単に爆され、ほとんどが凍死してしまう。そして夏期に吹く湿潤で冷涼な南東の風は、菌による病害を誘発しやすいので殺菌剤散布は必須となる。

生産及び販売計画を立てようと思っても、生産段階でつまづいてしまったのである。ちなみに、病害虫蔓延防止の観点から、防除不十分な穂木持ち込みによる接ぎ木は危険を伴う。器具や圃場の汚染には神経を尖らせているので、そのような接ぎ木サービスも検討したことはあるが、今のところ予定はない。しかし、ウィルスや病害虫に侵されているとしたら、実際どれくらいの被害なのだろうか?逆にPCR検査などで安全が確認されたものに関しては、ご希望の台木に接ぎ木させていただくサービスもありかもしれない。なので、一応北海道に適した台木4品種ほどは、絶やさず種木として残すことにしている。

※この2品種に関しては、昨秋果実を収穫し糖度19度を得たので、補糖無しで低アルコールワインを醸造するために供することも可能である。2018年度の圃場に設置した温度データロガーの記録では、4月~10月における10℃以上の有効積算温度は1,250に達したから、あながちまったく見込みがない訳でもない。ただし、この果実を付けた樹は二年生の大苗に育てたものを、畑に定植したものだ。この地では耐寒性に劣る1年生苗木の多くが枯死する。

不織布、ビニールなど化学繊維の防寒材で樹体を被覆すれば越冬率は高まると思うが、被覆と撤去には手間もかかるし資材廃棄に伴いゴミを出してしまうことから、当圃場ではそれらの防寒対策は行わないこととした。(再利用できるグロ―チューブのみ使用)

耐寒性試験の結果として、Vitis Viniferaの接ぎ木苗作りは事業として断念(凍結)することに決めたのは、昨年末のことである。今後は、並行して進めていたプランBを昇格させて、プロジェクトの主軸とすることにした。試験の対象を有効積算温度1,000℃~1,200℃の温度帯で実用に値する糖度に果実が熟し、真冬の耐寒性(防寒対策無しで、芽と樹幹が生存する)はマイナス30℃まで耐えられることを条件に試験対象を絞った。積雪が少ない地域でも凍害を受けにくく、その可能性を探り実証することが向こう3〜4年の仕事となる。もちろん、ワインとして美味しく飲めるものに限るのだが・・・。

さて、この間、苗木作りを業として目指す方々とも出会い、交流を重ねる中で得られたことは大きかった。情報共有や貴重な作業体験を通じ、知識と技術を習得させてもらったことにとても感謝している。そしてまた、同様に苗木ビジネスに参入を試みる事業者も現れるなど、状況は刻々と変化している。

最後に、発足当時の事業コンセプトを記す。
1. 不足する苗木の供給※1
2. 耕作放棄地を有効活用
3. 穂木採り用の樹から果実を収穫し、ワイン醸造販売。※2

※1.
北海道は広く、東西南北で気候の違いも顕著。地域毎に求められる品種性能が大きく異なる。主に寒すぎて従来のブドウ栽培不適地への救世種となるもの。耐寒性・病害虫抵抗性に劣るものは、生産者のためにならない。シャルドネやピノ・ノワール、ツヴァイゲルトなどすでに多くの方が植えられている品種を作っても意味がなく、現にそれらの苗木流通在庫はダブついてきているとの情報もある。
そこそこ寒さには強いが、醸造に必要な果実糖度に達する有効積算温度(10℃以上)が1,300℃~1,400℃必要なドイツ(一部オーストリア)の品種などは地域を選らばないと難しい。特にリースリングが道内で定着しないのは、そういった理由と思われる。また後志と空知の一部や函館方面では、冷涼な気候に適したヨーロッパ品種が問題なく育っており、実に美味しいワインが造られているが、その地域に限定した商品構成ではこちらとしても商売にはならない。それどころか、育つか育たないか分からないモノをあたりかまわず他の地域の生産者に売りつけてしまうことほど、迷惑なことはない。
とにかく道内をより広くカバーできるものが必要とされていると言うと、大袈裟だけれども。既存の品種に加え、品種選択の幅が少しでも広がって、美味しいワインの生産地が増えることは、アフターコロナの道内経済にとっても好ましいことに違いない。

日本のみならず、視野を広げて世界のワイン生産地やワイン用ブドウ(フランスやドイツなどヨーロッパの銘醸地だけに注目するのではなく)の情勢を見てみれば、この先の日本(特に北海道)でどんなものが必要とされてくるのかが見えてもくる。キーワードをこっそりお教えすると、SDGs、サステイナブル、IPM、オーガニックな栽培アプローチ。どれも最近よく聞く歯ざわりの良い単語の羅列ではあるが、ミーハー的に取り入れたワケではなく、環境に対する社会的責任については学生の頃から、自身の中の価値観の中心にあり常にテーマとしてきた。高い耐寒性と低めの有効積算温度で栽培可能なものを探す中で、耐病性や環境性能を問うそれらのキーワードと偶然にも結び付いたのである。もしも事業(仕事)として、それらの条件を満たせることができれば、本望だ。

皆さんご存知の通り、世界のワイン産地と比べて、日本の気候は中途半端に寒い冬(北海道は厳しい寒さと冷涼な夏、最近は極端に暑い夏も有り)、多雨で湿潤な夏。冷夏の地方・地域もあり、日本固有というかこの特殊な気象条件・気候風土をしっかりと調べ認識し、歴史から学び、いかに適合した品種や畑の立地条件を求め巡り合うかが重要となる。裏を返せば、豊かな水資源と肥沃な土地に恵まれた国でもある。近年はヨーロッパの熱波、オーストラリアの干ばつ、アメリカ・カリフォニア州では高温・乾燥に見舞われている。日本でも夏季高温、9月になっても夜温が下がらないなど果樹産業にとって好ましくないこともあるようだが、乾燥して水不足なる=潅水チューブをブドウ畑に這わすというところは、ほとんどないはずである。

需給関係には常に目を光らせ、ニーズに合ったものや需要を喚起する品種を提供する。当然ながら種木は公的な検査機関で、病害虫検定をクリアしたものに限り増殖を行う。北海道及び長野県と東北地方の一部など寒冷地で栽培される方が供給対象となる予定。

※2.
当初は委託醸造、後に自社製造販売に切り換える。
外部試験醸造は、2024年〜2025年を予定。委託醸造販売時期は、大まかに2027年頃を予定計画している。

自家製ワイン造り

日本の法律では、「アルコール度数1%以上の酒類製造は法律によって禁止(規制)されている」ことが、日本のワイン産業発展の足かせになっているのではないか?という仮説を立ててみた。

アメリカ合衆国では、個人が自家消費用として年間100ガロン(約370リットル)まで造ってよいことになっている。一家族に大人が2名以上居れば、なんとホームメイド・ワインとして200ガロン(約740リットル)まで許されているのだ。発酵瓶(カーボイ)・乾燥酵母などをセットにしたワイン醸造入門キットなども簡単に手に入れることができる。そして、出来上がったワインの品質を競うアマチュア・ワインメーカー(趣味として個人的にワイン造りをする人々)のコンテストや集いなんていうのもある。もちろん、アルコール度数の制限などはないと理解している。(参考:Wine Spectator)

東欧のチェコ・モラヴィア地方にあるミクロフという街には、約100のワイナリーがあるそうだが、なんとその半数は自宅で飲むためだけにワインを造っているというではないか!(JCBザ・プレミアム2020年12月号の会員誌より)

もともと私自身は、ワインブドウの樹(苗木)を育てることに興味というか関心があって、ワインを好んで飲んでいたわけでもなく、実はあまり良く知らなかった。赤か白か、シャルドネって美味しいね程度のものであった。なので、興味を持ちはじめた当初も、醸造に関しては素人が触れるものではないと思っていた。しかし、いろいろ諸外国の情報に触れてみると、多かれ少なかれ規制はあるものの、自家製ワインについては寛容であることが分かってきた。だいたい、紀元前から造られ飲まれてきたもので、自然発生的に生まれたワインであるならば、そんな大昔に最初から国税や保健所という組織や法制度もあるわけがない。ちなみに、アメリカ合衆国では、上記の条件を上回る場合、つまり商売としてワイン造りをする場合は、日本と同様に国税の許可や保健機関(FDA:食品医薬局)から醸造免許を頂かなくてはならない。恐らく日本ほど敷居が高くない気もするが。

1月3日の北海道新聞一面では、「北大・道ワイン研究拠点」という見出で新年の明るいニュースとして華々しく報じられた。“北海道内のワイン産業の振興と技術支援として「北海道ワイン研究センター」を2023年度に設立する”とのことで、2000年前後から始まった道内ワイナリー設立ラッシュを、単に一過性のブームで終わらせない気運を感じたことは確かだ。品種改良は10年~20年単位のものなので時間はかかると思うが、ワイン産業において種苗に関すること、各種分析・ハイテク技術の開発などが、国や大学機関からサポートされ、またそれを中心に展開していくというのは、フランス・ドイツ・アメリカ合衆国の例をとっても正しいやり方であり、まさにそういった取り組みが必要である。

栽培や醸造技術のエクステンションプログラムというか、学位取得が目的でなくて技術の習得支援としては、社会人も受講できるよう、カリキュラムの質は落とさずコミュニティーカレッジレベルの教育課程も検討してもらいたい。私含めみんながみんな、北海道大学に入学できるほど頭が良くない・・・(爆)。カリフォルニア州で言えば、UCデーヴィス校への入学は無理でもナパ・コミュニティーカレッジで履修という選択肢があるように。また、生産者の圃場に植わっているブドウ樹のウィルス検定サービスなども、取り入れて欲しい。コロナ禍ですっかり一般的にも知られたPCR検査だが、大学やアグリビジネス企業の研究機関ならお家芸といえるだろう。

またアカデミックな産業支援は間違いなく必要なのだけど、もっと市民がワインというものに親しめる環境が必要と思っているのは、私だけではないはずだ。庭先やベランダの鉢にブドウの樹を何本か植えて、果実が収穫できればボトル1本くらいのワインが造れる。納豆や漬物、日本酒(どぶろく)など発酵食品とその製造に恵まれた国内環境だというのに、1%未満のアルコール飲料しか造られない(それ以上は御法度)というのは、あまりにも馬鹿げていないだろうか?

国税庁の資料によれば、大雑把に言って、日本国内で製造(販売)されるワインは、8割が輸入ワイン、輸入濃縮果汁からの醸造、バルク品を小分けして瓶詰されたものである。一方で、近年は醸造技術の向上や醸造用のヨーロッパ品種が日本国内で栽培されるようになったことから、日本ワイン法などの法律が制定されたり、行政の整備も進んできた。ちゃんとした設備で造られているかなど保健所の審査というか衛生管理はもちろん大事なのだが、酒税というみかじめ料を取るためだけの制度だとしたら、ワイン生産を振興すると言っときながら片方の手で首をしめて造りづらくしているように思えてならない。

極端な考え方かもしれないが、何せご立派な醸造設備一式をそろえて本格的にやろうとすれば、数千万円~億の金がかかる。仮に自己資金や金融機関からの融資を元手に始めたとしても、ブドウを植えて最初の4~5年は実を成らせられないから生産できない=お金にならない。その後もうまく行かなれば経営は破綻するし、家族経営だったら大変なことになる。生活費とか子供の学費がとか、いろいろあるわけじゃないですか。下手すると借金かかえて離婚とか目も当てられない悲惨な状況に陥る恐怖もあったりする。

ということで、ご家庭の台所や車庫で作ってみたら案外うまく出来ちゃって、商売としても成り立つんじゃない?みたいなノリで、ワイン産業に参入できるくらいの敷居の低さにしてくれても良いのではないか!ワイン特区では、2キロリットルが醸造免許の得られる下限値だが、それ未満は自家消費に限り免許不要で個人醸造してもよいとまでは言わない。せめて、100リットルくらいは適正なアルコール度数で、プライベートに造らせるくらいの規制緩和をしてはどうだろう。

コロナ禍で、巣ごもり需要が伸びているという。暗いニュースにばかりとらわれていないで、この際政府はガレージワイナリーを推奨する施策でも考えたらどうでしょう。少なくとも道独自の法令を作ってはくれまいか。ちょっと過激な提案かもしれないが。

接ぎ木台

よく冷えた夜景

ほど良く降雪のあった日の夜は、ほど良く空気も冷えている。

北広島第二工業団地にたたずむ、社屋建物。工業団地内には、食品製造、倉庫業、電気部品、建材、化学工業、機械部品製造、機器整備など多種多様な業種がひしめきあっている。インダストリアル・エリアにありながらも、私どもは持続可能な農業的手法で事業の展開を試行中です。

29期の事業年度も、残すところあと3ヶ月弱となりました。お陰様で、もうすぐ創業から30年目を迎えようとしています。

静かな、お正月。

三つ葉
スーパーで買ったポット三つ葉。毎朝、食べる分だけ切って雑煮に入れる。

年末年始は、とてもゆっくり過ごせたので、いつになくリラックスして自分時間を楽しんだ。片意地張らず、流れに逆らわず、無理を強いらず。こうせねば!とか、こうあるべきだ!などと疲れるような思考はいっさい辞めた。正月三が日はデジタルデトックスと称して、なるべくスマホやタブレットもイジらない。SNSは見ない、テレビもなるべく見ない。

年末は寒気が下りていたので、会社の水道管が凍結して破裂していないか見廻りに出掛けたりもした。また、雪が積もって歩きづらくなる前に畑の巡回を、と思い静まり返った雪原を歩くのも悪くない。特にスキーのストックを突いてザクザク進んでいくのが、最近のお気に入りである。空気が冷気で引き締まり、小雪が舞う中、シカの足跡(たぶん)を追ってトドマツ林の中へ分け入った。

名前はトドマツだけど、モミ属だからモミの木だ。


大晦日から元旦にかけては、本を読んだり、過去に表計算ソフトで作って印刷した紙の予定表や広告の裏紙に、会社と仕事に関する思考の類いや今年の予定、今後のことを書き出して頭の中をスッキリさせた。

なるべくノイズを退け、情報の断捨離というか本来の自分にとって不要なコトやモノを洗い流し、大まかに向こう20年先まで目標を立て、2021年の新年を迎えたのである。

静寂の中で

ようやくまとまった雪が降った。12/20

朝から降り積もった雪は、40〜50cmに達した。クリスマスを目前に、ようやく本格的な冬景色となった。

12月も半ばを過ぎ、職場は久々に穏やかな雰囲気に包まれている。と私自身は感じている。今年はコロナ禍ゆえに、忘年会なる年末行事も中止となり例年のように労うことはできないが、なんとなく平和に時が過ぎていけばそれで良い。

このブログは、いちご苗増殖に関する紹介や寒冷地に適したワインブドウの苗木を育苗するという弊社の実験的取り組み、かつ挑戦的な試みを中心にPlant Space Vineyard というタイトル(施設名称)で、展開しているプロジェクトのストーリーである。最近は、そこへ若干の私的感情と哀愁かつ将来展望を漂わせ、人生観及び独特な世界観を織り交ぜながら勝手気ままに綴るエッセイ、随筆のような様相を持たせてきた。もっとも初期の頃は、社内向けに発したメッセージだったり、社外の方との交流の記録などを載せていたのだが。
時折、社内状況をほんのりとにじませたりもしたが、肝心カナメな当の本人にメッセージが伝わっていない(響いていない)ということが発覚し、ガックリきたことも・・・ある。

さて、インターネットから新聞、書籍といったありとあらゆる情報の中では、まさに玉石混交に様々なものが溢れ、垂れ流されている。特にオンライン上には非常にクダラナイどうでもいいようなSNS投稿やブログの記事、とても有益な公開情報、ネット経由だからこそ手に入れることができたものなど購入手段にいたるものまで様々な要素が含まれている。書籍から多くを学び取る私にとって、和書&洋書の購入機会を数多く与えてくれたAmazon.comにはとても感謝している。ちなみに、このブログも玉(宝)ではなく、その辺に転がっている石のようにたわいも無いものか単なる自己満足の類いであるから、適当に受け流していただきたい。

今から10数年前、会社の経営、組織運営に行き詰まった私は、とあるビジネスセミナーに参加した。その時聞いた話しでは、現代の産業構造はサービス業が7割を占めているとのことだった。かつて、多数を占めていた農林水産業から工業、製造業の時代になり、次第にモノが隅々まである程度行き渡ると、今度はより良いサービスやライフスタイルを求めるという経済的な需要を満たすため、働く人の割合も今やほとんどがサービス業に従事するようになったようである。特にバブル崩壊後は、廉価な製造コストを求めて、製造拠点が東アジア諸国に移転して産業空洞化などとも言われた。近年は、モノからコト消費に移行しているとも言われていたし、継続的に儲けを出すには、鉄砲売らずに弾を売れ、などと説かれたこともあった。果たして、苦し紛れに無理やり何かを売りつけ利益を上げるためだけに捻り出したようなビジネスは、本当に必要なのだろうか?

現在、コロナ禍の影響をほとんど受けていない業種もあれば、思いっきり打撃を受けているものとに分かれいる。当時、就労人口7割だったサービス業に分類される職業(実質的な物を生産しない非製造業に該当する)も、今や8割9割方に迫る勢いなのではないか?そこへ、外出自粛、不要不急の行動は慎むようにと非常ブレーキがかかった。そして、商品として多くのサービスを提供する業種業態、施設では甚大な経営的ダメージを被ることになったのである。残酷ながら、必要至急な仕事や商売だけが生き残って、それ以外は自然淘汰されてしまうのだろうか。

2年ほど前に、ユヴァル・ノア・ハラリ氏著のサピエンス全史という上下巻からなる書物を読んだ。難しい内容でもあったが、読み終えた後は今まで読んだビジネス本に書いてあることがとても薄っぺらく感じるようになってしまったほどの良書である。帯にはビジネス書大賞とあるが、どちらかというと文芸書・哲学書に属すると思われる。

こういった本を読むと、日頃身に起こる出来事も“近視眼的にしか見ることができない”という状態から抜け出すことができるかもしれない。何かが解決したりはしないかもしれないが、浅はかな考えや意見に振り回されることや、少なくとも安っぽいミーハーな素人情報に惑わされなくなるだろう。興味ある方には、ご一読をお勧めする。

農業と環境に関する警告書として、遅ればせながらセンスオブワンダーで有名なレイチェル・カーソン女史の「沈黙の春」を今日読み終えた。

コロナ禍は、人類の行き過ぎた活動や思い上がりに警鐘を鳴らすため、起こるべくして起こった重要なメッセージにも思えてならない。2021年の春を、世界は沈黙したまま迎えるのだろうか。

木工作業

マルチホルダー
マルチホルダー MH-01と名付けた。

いちご苗の培地被覆に使用する白黒ダブルマルチを敷く際、毎年腰をかがめながらロールを転がしていた。設備の構造上、手作業となるわけだが探せば便利な道具も売ってはいる。安易に道具や設備にお金をかけるのは簡単だ。しかし、売り物でもイマイチしっくりこないものだったり、使い勝手が悪かったり修繕しにくかったりする。であれば、頭と体を使って道具を自ら作ってしまおう。

実践はおろか、ろくに大して自分で調べたり考えもせず、すぐ人に聞いたり頼ったりする輩がいるが、あれはいかがなものか。金で何でも解決するのも良くない。やる前から出来ない理由を並べるのも分からなくもないが、あまり好ましくはない。また、世の中には知らないことがたくさんある。自分の知っていることが絶対ではなく、自身の知識と体験だけで全てを決めつけてしまうのはもったいない。常に見聞を広める努力をし、謙虚さも合わせて持とう。逆に言えば、人はそれぞれ自分のモノサシ、フィルターを通して世の中を見たり聞いたり判断している。例えばAからZまで(アルファベットに例えるなら)26人いるとする。26通りの個性があり得意なこと、不得意なことや精神的・肉体的・能力的なものもそれぞれ異なる。共通する部分もあるかもしれない。Aが得意なことはAにやってもらい、代わりにAが不得意なことはBにとってが得意だったりする。であれば、それをBが担うことができる。互いに補えあえば、トータル的にOK。なので、他人の意見や考えが第三者にとって100%正しく全て受け入れられるとは限らない。自分の信じる道を行こう。おっと話が飛躍してしまった。

材料は身近なところで手に入るものがよい。木材で作れば、土にも還りやすいではあるまいか。SDGsとかサステイナブルな観点から、製造時にCO2や有害なガスを排出せず地球環境にも優しい。ということから、マルチフィルムのロールを心棒にセットして張る器具を作成した。といっても、サランラップを引き出すケースのようでありトイレットペーパーのホルダーみたいな簡素なものである。レジ袋が有料化され、少しでも石油化学製品の消費を抑えようということなのだろうけど、毎年廃棄しなくてはならないマルチフィルムについては悩ましいというか、心苦しい。

全ての工業製品を否定するつもりはない。木を切るノコギリ、ビス留めするインパクトドライバーは思いっきり工業製品だし、作業している温室のパイプや農POフィルムなども近代の化学工業技術がなければ手に入れることもできない。そもそも部材を買いに行くのに、ガソリンを焚いて自動車を運転していく。そして、この文字を打っているのはタブレット端末。矛盾するかもしれないが、だからこそ、少しでも自然の温もりを感じるべく、より自然に近い素材で囲まれたいという動物本能的な願望が生まれる。

さて、来シーズンのブドウ苗木挿し木増殖ベッドや畑に持ち出すことも可能なマルチホルダーで、作業がはかどることを期待して、そろそろ2020年を締めくくろうとしようか。いや、まだ早いか。どうか2021年が、穏やかな年となりますように。

手当と越冬支援

不織布巻き付け
食害部補強と芽の保護

4年ほど世話をしているツヴァイゲルトの枝に処置をして参りました(写真上)。根本はブドウトラカミキリまたはガの幼虫に被害を受け、まださほど太くない主幹の台木部に穴が開いています※。中心の髄(ずい)の部分はほとんどかじられてしまい、外側の維管束半分ほどでつながっています。越冬のため、ワイヤーから外し枝を伏せると、自ら支えることもできず、くたりと弱々しく地面へ倒れ込んだのでした。

※食害に気づいたのは、収穫間近の10月上旬。応急処置として、害虫の捕殺・念のため殺虫剤(スミチオン等)のスポット散布、傷口にはトップジンMペーストを塗布し、さらに開口部をメデールテープでぐるぐる巻きにしてふさいである。ちなみに、当園では訪花昆虫や土壌中の有用微生物群への影響を最小限にとどめるため、小規模でもあることから殺菌・殺虫剤の散布・施用については背負い式噴霧器及び手動式スプレーで散布する範囲を限定しておこなっている。定植や剪定のタイミングなどは、バイオダイナミック農法の一部を取り入れることも。

さすがに、このまま雪の下へ寝かすのも(雪が積もればですが)可哀想に見えて、食害部は補強目的に不織布を巻き付けます。食害部根本の屈折を和らげるため、今年は角度をつけて寝かせることにします。そうなると上部の芽が少し空を仰ぎますので、寒風から保護するために、こちらにも同様不織布を巻き付けておきました。商業的に考えれば、ここまでダメージを受けた樹は、生産性がかなり落ちるでしょうから改植の対象になるかもしれません。(しばらくは、根と地上の樹液流動部が半分になるわけですから)

追記:俗に言うブドウトラカミキリやコウモリガの幼虫なのかどうかも分からず、実はイタドリの茎に巣くう虫(渓流釣りに使用される生餌)ではないかとも思えてくる。それは、アズキノメイガ(またはフキノメイガ)と呼ばれ、北海道では初夏に発生するらしい。その後産卵・ふ化し、夏ごろに茎の中へ侵入し、食害すると理解する。侵入直前に、鳥がついばんで食べてくれればよいのだが・・・。自宅庭のラズベリーの茎などもよく同様の被害にあう。

ヴェレゾンが始まった頃
ヴェレゾンが始まった頃を思い出して

果たして来年は、どれくらいの果実をつけるのか?もしくは、枯れてしまうのか?あとは樹の自然治癒力にゆだねるしかありません・・・。厳しい冬の到来を目前に最後の養生をしたのでした。

ソーヴィニヨン・ブラン

2017年ポット養成1年間、2018年5月に大苗として定植、1株は無事に越冬したがもう一株は枯死してしまった。生き残った一株から伸びた新梢は、2019年秋に程よく登熟したので次年度更にコルドンを伸ばすために数芽残して、接ぎ木用に一部の枝を採取した。

2020年の年明け以降、降雪量が極端に少なく(積雪も10~20cm)コルドン仕立て中のソーヴィニヨン・ブランは凍てつく外気に樹幹もろともほぼ地際付近から露出したままとなった。冬期間、稲わら等で防寒養生するも、5月以降芽吹くことなく凍害による枯死となった。試しに接ぎ木接合部分より上の枝を折ってみると、完全に乾いて枯れていた。三笠市のヴィンヤードでは、当該品種が良く育っているが、やはり積雪多く雪の布団で芽や幹が守られていることと、夏場の季節風が弱く、気温も暑くなる(暖気がとどまりやすい)エリア条件が必要のようである。

比較的冷涼な地域でも栽培されているというが、基本的に冬が零下になる地域では、厳しい品種と認識する。フランス・ボルドー地方の年間気温を見てみても、12月~2月の最低気温はせいぜい一桁台で氷点下にはなっていない。寒波が来ればそれなりに凍害に遭ってしまうのだろうけども。カリフォルニアのナパやワシントン州の栽培エリアでも、真冬の北海道(道央以北)ほどは寒くならないと思うので、好きな品種ですがもう少し温度が必要のよう。というか、北広島でこの品種を植え付けること自体が無謀なのは百も承知である・・・。むしろ、毎年2月はじめ頃はマイナス20℃を記録するエリアである当圃場で、初年度に一冬越して春に芽吹いたこと自体、奇跡だった(と思うことにする)。また余市や函館方面での栽培事例を私は知らないのだけれど、成功されてる方はいらっしゃるのだろうか?

名産地であるニュージーランド、チリなどの土地カンや気候風土に馴染みがないので全く想像ができませんが、近似した気候は日本国内でいえばどの辺りなのだろう?栽培(耐久)試験をする上で、ひとつの基準にしている考え方です。

枯死したソーヴィニヨン・ブラン
枯死したソーヴィニヨン・ブラン

野生酵母で日本のテロワールを表現

 乾燥培養酵母による発酵と野生酵母によるワイン造りは、大きく意見が分かれるというよりも専門書の記述や専門家意見の見識としては、野生酵母に対して否定的な内容が多い。天然の酵母だと含まれる汚染酵母によりアルコール発酵が途中で止まってしまうスタックが起こりやすく、特有のオフフレイバーが発生するなど管理面・品質面で問題があるという。言葉の表現として知ってはいるものの、それを嗅いだこともないので、どんなものかも分からない。その他、自然派ワインは酸化防止剤、野生酵母を滅菌させるための亜硫酸塩の添加する、しない、もしくは添加量を減らすなど作り手の方によって様々である。

醸造の手間、出来上がったワインの保管方法など一筋縄ではいかないのかもしれないが、野生酵母によるアルコール発酵およびMLF発酵を経て作出された赤ワイン(折引きのみでフィルタリング無し・清澄剤使用無し)などを口に含んで喉を通過させた瞬間、すんなりと染み渡るような(欧米ワインにはない)飲み心地を一度味わってしまうと、その可能性に希望を持たずにはいられない。

 しかしながら、飲み手からしてみると、どんなにこだわりを持って作られたものだとしても、飲んで美味しくなければ、また買って飲みたいとは思わない。近年、日本のワインが著しい品質向上を遂げている一方で、飲むに堪えない品質のものも散見される。

 買い求めやすい価格で、それなりに美味しいコマーシャルワイン。マズくないけれど、作り手さんの顔が見えない。その人の思想や世界観が感じられないから、単なるアルコール飲料になってしまう。しかし、生産者の人柄の良さが染み込んだワインは、本当に美味しい。トゲトゲしさがなく、日本人の優しさと言うか瑞々しさというべきか。アルザスのビオワイン、クリスチャン・ビネールのシルヴァナーを飲んだときも、優しい飲み心地を感じた。
 
 10月下旬、たまたま時間が取れて、余市のドメーヌ・タカヒコさんへ収穫ボランティアとしてピノ ・ノワールの収穫に参加させてもらった。曽我さん自ら収穫の合間やセラーでプレゼンテーションをしてくれるのだけど、野生酵母に関する説明に心を奪われた。

 世界からも少しづつ注目を浴びるようになってきた日本ワイン。ワインが作られるブドウ品種は、欧米品種が多くを占める。培養酵母もドイツ、フランス、アメリカ産。発酵食品大国日本に自生する野生酵母で安定して美味しいワインの生産ができるならば、それが日本のテロワールを表現する重要な要素になりはしないだろうか。

 少し前の日本農業新聞に、気候変動に関する記事が掲載されていた。今後100年で、北海道全域がワインぶどうの栽培適地になるそうだ。喜ばしいことでもあるけど、これに関しては、複雑な心境だ。異常気象で災害の発生が多発したり、今まで作られていた作物が生育しなくなる、夏が暑すぎることの弊害。冬は降雪量が3〜5割減ってしまうことで、除雪業やスキーリゾートは大変だ。寒さに弱いヴィニフェラ種を雪が凍害から守ってくれることもなくなる。なぜなら上昇する平均気温からは、凍害にならないほど真冬の最低気温は暖かくはならないと思うからだ。

 北海道に暮して、来年でちょうど20年になる。アメダスのデータを見る限り、この20年間で、年間降雪量が半分ほどに減ったようである。4月の下旬まであった残雪は、4月上旬には消えている年も増えた。少し前までは、ゴールデンウィークでも肌寒く、桜の咲くような陽気ではなかったように記憶する。7〜8月も蒸し暑くなったと思うし、秋も長く10月11月も以前ほど冷え込まなくなった。

 とはいえ、人気のシャルドネやピノ ・ノワールが栽培できる地域は北海道内でも限られている。気候変動とともに高温多湿になる傾向も否定できない。積雪不足による凍害の多発、湿度上昇で菌類による病気の発生なども増える可能性がある。実のところ、Plant Space Vineyardのサテライト露地圃場では、寒さゆえフランスのブルゴーニュやボルドーの品種がまともに育たない。ドイツ系品種やオーストリア品種も一部を除き、枯れてしまった。台木に関しては、耐寒性が強く試験的に植えた11種類のうち10種類が生き延びている。接ぎ木に用いることのできるものも4種ほどが実用に値することが分かった。この辺も踏まえて、今後北海道をはじめとする寒冷地でのワインブドウ品種選びも、リスクヘッジを考慮しなければならず、当種苗園でもそいったシチュエーションに対応できるものを導入して育て、提供したいと考えている。

話しがそれてしまったが、野生酵母で発酵させた日本ワインが、今後も楽しみである。ワインは6,000年前から造られてきたというが、酸化防止剤や培養乾燥酵母は、その歴史からすればごく最近の発明品である。

圃場納め

 12月も5日だというのに降雪がほとんどありません。一連の冬支度はこの時期にしては早目に片付いています。

 コロナとは関係なく、2019年〜2020年上半期は私にとって良いこと悪いことの振幅が非常に激しく、近年まれに見る波乱含みの2年間でした。男の大厄後厄が終わる頃は、今までとは大きく仕事と人生に対する価値観や忍耐というものに変化が起き、船が思いっきり舵を切って進路が変わっていくような、何かしらの転機にあたるとも聞きます。今まで温めてきたものがあるとすれば、それを実現しようとしたりそのチャンスが訪れる。またやせ我慢してきたことに対して、堪忍袋の尾がきれこともあるかもしれません。ライフスタイルというか、より自分の心に忠実になってくる、そして覚悟し腹を決めるそんな年齢なのかもしれません。

 比喩的になってしまいますが、そんなこんなで、11月中旬以降は、喪失感や疑心暗鬼、自己嫌悪だった心境からようやく本来の落ち着きを取り戻しつつあり、描いた地図は正しいのか、進路は間違っていないか、羅針盤は狂っていないか、自問自答を繰り返しながらも、恐らくもう大丈夫だろう・・・と思える状態になってきました。大海原で嵐に巻き込まれた貨物船が九死に一生を得て難を逃れ、今は小春日和のように穏やかな船上で、遠く霞む目的地を目指しながら、船員が活発に働く様子、積荷の無事が確認できたことで船長は安堵感に浸っていた。航海上の方針、船内・船外活動でのアクシデントやトラブルで、やむなく寄港した港で下船し去っていった仲間への思いが、時より頭をよぎったりもした。しかし、それも時が解決するだろう。定常の乗組員(クルー)の健康状態も良く志気も高い。臨時クルーも確保した。


 さて、いちご苗の選果納品作業に引き続き、お陰様で葡萄畑や育苗温室の冬支度も思ったより順調に進みました。剪定作業、越冬するための枝伏せ、テッポウムシの最終防除、穂木台木の採取・殺菌処理・保管、清掃整理整頓、除雪機のオイル交換など本日をもって全て終了。ハウス内では枝振りの良い穂木も採取でき、製品化へ向けて一歩前進です。これで新しい年を清々しい気分で迎えられることでしょう。皆さんの、冬支度いかがでしょう?