(French Hybrid cultivar Ravat 262 x MN1094)
チェリー、ベリーのまろやかな口あたり。フレッシュなコクとうま味が調和する、これはまさに新ジャンルのアメリカン・ピノだ!

耐寒性・耐病性の赤ブドウ品種(果肉が赤い)として知られるMarquetteからは、ミディアムボディ(中口)の辛口赤ワインが造られる。オーク樽での長期熟成に適した品種だが、ヌーヴォースタイルやロゼを作る醸造家もいる。ミネソタ大学(University Of Minnesota)の育種プロジェクトから作出されたハイブリッドで、2006年に発表されて以降、寒冷な気候に適応した最も人気のあるブドウ品種のひとつとなっている(米国中西部、北東部、西海岸の一部、カナダの一部、英国やバルト海沿岸国の内陸部などヨーロッパの寒冷な地域)。
[特徴]
房の大きさは、中程度で重さは113g前後。果実同士の間隔は、適度にすき間がある。ワインは濃い赤色で、チェリー、ベリー、ブラックペッパー、スパイスの複雑な香りがある。一部の生産者から造られるワインには「土の香り」(Earthy aroma)も感じられる。
[耐寒性/耐湿性/有効積算温度]
USDAハーディネスゾーンは、Z4(-34.4℃ ~ -28.9℃)
有効積算温度:1100℃(GDDs-Growing Degree Daysの略)以上
醸造に必要な果実糖度を得るためには、1300℃以上が理想と思われる(補糖無しの場合)。過湿な土壌では立ち枯れの恐れがあるので、地下水位の高い土壌には不向き。
[樹勢] 中程度
[芽吹きと収穫のタイミング]
芽吹きは早いので、遅霜に注意が必要。アムレンシス系の山ぶどう、およびその交配交雑種より遅くヴィ二フェラ種よりは早い時期に出芽する。22~26゜Brix、ph2.9~3.3、滴定酸度(TA)11~12g/Lが収穫の目安。北海道・道央圏では9月下旬の収穫が想定されるが、有効積算温度の違いから場所によって数週間の開きがでるものと考える。
[栽培]
仕立てはSingle High-Wire (シングルワイヤー)またはVSPどちらも可。樹間距離は1.8m~2.1mが推奨される。
[耐病性]
べと病、うどんこ病、灰色カビ病に中程度の耐性がある。湿度の高い環境では、黒とう病が発生するので、展葉期から開花期、果房肥大の初期くらいまで防除は適切におこなう。
[はじめてMarquetteのワインを飲んだときの衝撃的かつ想像通りの印象]
コルクを抜栓し、心の奥底で祈った。頼むから事前のリサーチ結果通りに、美味しいワインであって欲しいという願望。一口目を口に含んだ瞬間、私の心配は杞憂に終わった。まるでカベルネ・ソービニヨン、シラーやメルロをブレンドしたかのようなふくよかで滑らかな口当たり。テンプラニーリョに近い印象も受けた。Vitis.ヴィ二フェラが育たない厳しい環境、寒冷地でも育つブドウでこんな美味しいワインが造れるのか・・・。2019年の初夏、初めてMarquetteのワインを飲んだとき、驚きと感動で胸が一杯になった。グラスを傾け口に含むと滑らかな舌触り、適度に濃い赤、ルビーレッドの液体は頬の横を通り過ぎて喉の奥へと静かに流れていった。
このMarquetteという赤ワイン用ハイブリッド品種から造られたワインが、なぜこれほどにバランス良く美味しいのか?その答えは、遺伝的ルーツに隠されている。ピノ・ノワール、カベルネ・ソービニヨン、メルロやブラックハンブルグなど名立たる欧州ブドウの遺伝子を掛け合わせた品種と耐寒性・耐病性をもつ北米自生のリパリアと幾重にも交雑・交配された究極の赤ワイン用寒冷地ブドウだから、美味しくないワケがない。テイスティングのとき、ハイブリッド品種のネガティヴなところは、一切感じなかった。
数々の受賞歴に輝く耐寒性ワイン用ブドウ品種、Marquette
耐病性にも大変優れている耐寒性赤ワイン用ブドウ品種で、複雑な交配・交雑の系譜を持つハイブリッド品種。リパリア、アエスティヴァリス、ラブルスカといった北米在来種をベースに、メルロー、カベルネソーヴィニヨンそして近縁ではピノ・ノワールの遺伝子が人工授粉により受け継がれた。ピノ・ノワールはMarquetteの母方の祖父にあたる。
ハイブリッドと聞いてネガティヴなイメージを思い浮かべる人もいると思うが、ワインのクオリティーは驚くほど高品質である。その特徴は、魅惑的なルビー色(ガーネット寄り)で、カリフォルニアのナパやオレゴンのウィラメットバレーのピノ・ノワールを彷彿とさせる。複雑味の中にタンニンが感じられ、チェリー、ベリー、ブラックペッパーの香りがふんわりと漂い、コクがありまろやかな味わいながら、スパイシーな成分は嗅覚と味覚の両方で感じ取れる。
寒冷地での赤ワイン用ブドウ栽培&醸造において、新たな定番品種になる可能性を秘めており、特に北海道で大きなポテンシャルがある。
この品種は、2006年に米国ミネソタ大学から発表され、一時は苗木の供給が追い付かなくなるほど、リリース直後から人気がある。
2010年にはバーモント州のシャンプレーン湖の畔にあるワイナリーが、ミネソタ州で開催された寒冷地における国際的なワインコンクール「International Cold Climate Wine Competition」で最優秀賞を勝ち取るなど、周辺のワイナリーで醸造されたワインが数々の受賞歴に輝いている。
また、ミシガン州のデトロイトでは、自動車産業衰退後の新たな産業としてのワイン造りが、Marquetteの登場により活気づいている。ミネソタ州はもちろん、既出のバーモント州・ミシガン州、ニューヨーク州などの北東部・中西部をはじめ、現在はワシントン州の一部、コロラド州やオレゴン州の標高が高く冬の寒さが厳しいエリアにも広がりつつある。カナダのケベック州でも広く栽培されるようになり、近年オンタリオ州では、ピノ・ノワールなどのヴィ二フェラ種と同等に扱われ、公認のクオリティーワイン用ブドウ品種として登録された。
©Hokuzen Co., Ltd.