ボケ(木瓜)の実

ボケの実
ボケの実

 10年ほど前、自宅の工事で移植することになったボケの樹。春先には赤い可憐な花を咲かせるバラ科バラ族に分類される花木で、スコップで掘り上げると株がバラバラになったのを思いだす。

移植先は、会社事務所敷地の端っこで、とりあえず看板の近くに植えてみるかという、ぞんざいな扱い。地面は砕石混じりの硬い地盤で、ツルハシでないとほじくれない硬さ。まったくもって、樹木を植えるような場所ではありません。

ただし、朝から夕方までたっぷり日が当たる。枯れる確率9割だろうくらいに思っておりましたが、ところがどっこい驚異的な生命力で根付いたのです。当然肥料も水もなんにも与えず、厳しい環境下で生き延びていたのであった。

落下したボケの実
青ピーマンか小ぶりな洋ナシくらいにしか見えない落下したボケの実

 かれこれ10年経って、その樹が実をつけるということに初めて気が付いたのは、今日の午前中のこと。ボケの樹のすぐ下に、転がっている得体のしれない実を発見したときは、歩道のすぐ脇だし誰かが出来損ないのピーマンを投げ捨てたのか?なんという不届き千万な奴がいるものだ!とか、そんなワケはないでしょうとか、カラスがくわえ損ねて落としていったのか?などと、いずれも何者か第三者の仕業を疑った。

まさかと思って、ボケの樹を見ると枝にピンポン玉くらいの大きさでデコボコしたいびつな形の実が成っているではないか。(一番上の写真)よくもまぁ、こんな荒涼とした場所で、実まで着けるとは・・・。しばしのあいだ、その生命力の強さゆえに感動し恐れ入ったあまり、樹の前で呆然と立ちつくしてしまったのである。

 どうせこんなもの食べられないだとうと、またもや高をくくっていると、いやいやなんの、なんと食べられるそうではないか。再び恐れ入った。

ボケの実断面
ボケの実断面

 食べられるといっても、そのままでは硬くて渋く酸っぱいので、砂糖(シロップ)漬けにしたり果実酒に加工するのがよいそうである。果樹が面白いのは、予期せぬ喜びを与えてくれるサプライズなところにあるのかもしれない。ダメで元々精神で、植えてみて「予想通りダメでしたわ」ということが多いのだけれど、あまり期待せずにほったらかしにしておいたところで、意外と育ったり実がなったりする。「たまたま条件が合った」というただそれだけのことかもしれないけれど。

 気候変動時代ではあるが、春に花咲き、秋みのる。ややこしいことは水に流すか抜きにして、人生もこうシンプルにいきたいものである。優れた観察眼や的確な判断力を身に着けたいと思ったり、他人に求めたりするけれど、時にはなんとなく(仕方ねぇなぁと)うまくやることも必要で、少し前に流行った「鈍感力」も役立つか?多少のボケも許される、そんな寛容な世の中であっても良いかもしれない。これは木瓜(ボケ)の実が届けたかったメッセージなのだろうか?そう思うのは、いささか考え過ぎだろう・・・と自分にツッコミを入れる。

施設園芸と化成肥料、切っても切れない関係

肥料欠乏症の葉(ぶどう)
肥料欠乏症の葉(ぶどう)

 ハウス内で苗を生産するイチゴは、露地育苗での課題であった土壌由来の病害虫被害低減のため培土(培養土)や自然由来の培地資材を使用し、それらは前年更新する栽培方法をとっている。一方、ブドウの育苗研究ハウスでは穂木を採るための母株栽培床をレイズドベット(木枠を組んで、そこへ清潔な培養土を盛る)方式とし、独自の栽培方法樹立を目指し模索しているところである。

 もともと工場を解体した更地という地面に土が全くない場所で、温室を建てて何かを栽培する場合はポット植えか新たに土を投入する(客土)しかない。基礎コンクリートをそのまま40mm程度の粗さで破砕して鉄筋等は取り除き、整地した上にハウスを建設したのであるが、条件をメリットにとらえ試行錯誤の最中といってもよい。砂利と破砕コンクリの地面は、いわゆる土壌由来の好まざる微生物や菌類とは無縁のはずなので、ハウス内はある意味クリーンな状態で雑草も生えさせなければ草むらに潜む害虫というわれる類から栽培作物を低農薬(露地育苗に比べて)で育てることができる。近隣には農地が無いので、他の作物から病気感染リスクも極めて低い。また鹿など害獣に食害される心配もない。(アライグマが出没したことは過去にあったが、今のところ特にこれといった被害はない)。

 ただし、例外的に今年は8月以降の降雨が多く多湿な条件となったため、多少のボトリチス菌による灰カビ病とみられる症状が見られた(ピノ・ノワールなどの遺伝子をもつ灰カビに罹患する傾向がみられる品種)。これについては、殺菌剤の散布とハウス内換気を適切に行うことで抑えることができている。

 さて、ここからはハウス育苗における連作障害について述べることとする。昨年、ブドウの苗木を栽培した同一の栽培床で同様の挿し木育苗を開始した。掘り上げた苗木の残根や落葉のすき込みなど、有機物が土壌中に多く残る培地へ植え付けの2ヶ月ほど前から有機質肥料の投入を開始し、発酵(分解)と切り返し、太陽光の紫外線を利用した土壌殺菌を試みた。牛糞、鶏糞、菜種油かす、石灰などを混和させ、水をかけて熟成させるというものである。今年は、化成肥料が値上がり、入手しずらい状況が春先に発生したため、国内で容易に入手することができるそれら有機肥料をメインに肥培管理を行う方法を試したかった。むろん、緩効性肥料の投入も行わない極端な作戦である。


 6月の植え付けから1ヶ月ほどは、なんなく成長を続けていたが昨年比で7月以降生育スピードが格段に遅れ、新梢の伸びが著しく低下した。液肥を施用し葉色は改善したものの、今度は肥料不足と思われる生理障害が発生。昨年は、8月~10月まで摘心・整枝剪定した枝葉の量が思ったより多く、肥料分をもっと少なくしても良いはずだという仮説を立てたのだが、如何せん元肥の量が少なすぎたのかもしれない。

 苦土(マグネシウム)欠乏症は、虎の模様を呈するトラ葉を発してしまう。下の写真がその様子である。

トラ葉
いわゆるトラ葉のような模様を呈した

 そこで、即効性のある液肥を寒中したことろ症状は治まる気配を感じた。窒素・リン酸・カリの他カルシウム成分を含むものであったが、1ヶ月以上経過した8月下旬、イマイチ葉の縮れや小葉化が続いていたので、マグネシウムなど微量要素を含む水に溶かして使用する別の銘柄も追肥。液肥は即効性はあるが肥効期間が2週間ほどと推定されるが、ハウス内は10月下旬まで約2ヶ月は生育が続き、以降登熟期間へと入る。肥料欠乏気味の状態でこのままいけば、株や樹体内養分が十分に蓄えられず、来年の生育に支障が出るため、まだしばらくは栄養を切らすことができない。そこで、ブドウ園などへの施肥登録がある粒状の緩効性肥料を1株あたり6g与えることとした。一株の苗木は1ヶ月あたり窒素1gを含むものを1回与えれば十分という情報を参考に、秋口までの栄養として(過去数か月分の不足分を加味)、潅水チューブ下の株元散布・土壌混和を実施したのが9月の上旬。


 1週間~2週間するとその効果の表れが顕著となり、葉は青々と色濃く新葉の展開・新梢の伸びがすこぶる良くなってきた。この改善効果から言えることは、苦土欠乏というよりむしろ窒素が吸収できていなかったのではないかということである。北海道立総合研究機構(道総研)のWebサイトを参照(窒素欠乏)させていただくと、「症状の特徴」や「発生しやすい条件」等の内容が当圃場の事例と見事合致していたのである。つまりそれは、新葉の小葉化や黄化現象が見られたこと、未熟な有機物(当圃場の場合は、切断された根や葉の残渣)が多量に施用された際に起こる、土壌中微生物の急激な増加がもたらす作物と微生物間の窒素奪い合いが、ブドウ樹の窒素欠乏を引き起こしたのではないかと結論づけ、理解したからである。

下部の葉は、葉緑素が抜けたままであるが、上部は伸長にともない改善された。

 以上からして、過剰な化成肥料を施すことは避けたいけれどハウス内育苗という施設園芸においては、すべて有機肥料でまかなうことは現時点で無謀というか現実的でないように考えを改めてたのである。当社では、イチゴ苗については年間数十キロ、ブドウ苗木に関しては大雑把に見積もっても2~3kgを年間使用量とするため、すごいたくさんの化学肥料を消費しているとは思えない。もちろん過剰施肥による無駄や土壌汚染は避けるべきであり、適切な施肥設計は重要なのは承知している。
 

 露地のブドウ畑では、ここまで肥料成分に神経質にならなくても、樹は育っていましたが、ハウス内における幼苗木の管理となると何かと手間はかかりますものの、引き続き育苗管理に励みたいと思います。将来的にも、当面は少量良苗生産体制となるかとは思いますが、有望かつ健全な苗木の生産体制を構築すべく、日々健闘しております。

イチゴ苗、怒涛の水やり

イチゴ苗の水やり
イチゴ苗の水やり

 9月上旬から、恒例の子苗栽培床への水やりが始まった。6月上旬の植え付け、7月~8月の花房摘除などの管理作業の次に労力をひたすら必要とする大事な工程である。9月は、とにかくこれでもかというほどたくさんの水を掛けて掛けまくるのです。散水チューブも併用しながら、培地に水がしみわたるまで長いホースを引き回し、ハウスの中を行ったり来たりする。ハウス1棟だけなので、オートメーション化する必要もない。手動での潅水作業は、ある意味良い運動であり、何しろ2時間近くホースをもって延々と通路を歩くので、適度に腕と足腰の筋肉が鍛えられる。わざわざ金を払ってスポーツジムなどに行かずとも、労働しながら体力維持といった健康増進効果も得られる素敵な仕事なのだ。緑の葉っぱを眺めながら、ときおり花を取り損ねた株からイチゴの実がなってしまうのだが、それをつまんで食べたりしながら散水している。むろん対人ストレスなどは皆無で、精神衛生上もすこぶる良い。

 今年は、年初から肥料の高騰・在庫不足が社会現象となっている。ウクライナ情勢や中国が自国の人口増加と近代化に伴い食料や肥料などの輸出国から輸入国に転じたことで、日本に入ってきていた肥料原料などの調達が滞り始めた。

 日本政府は、緑の改革と名打って2050年までに化学肥料や化学農薬の使用を減らすよう政策を打ち出した。しかし、それよりも前にフードロスをなんとかしなくてはならないのではないか?コロナウィルスの爆発的な感染で、営業自粛を強いられた飲食業界における廃棄ロスは一時的に減ったかもしれないが、スーパー・コンビニなどの小売流通・生産農家側での肉、野菜、米、牛乳、加工食品などの廃棄ロスは計り知れない。SDGsで子どもの貧困を無くそうというのは大事だけれど、必要としている人たちに食料やお金が回っていかない今のこの歪んだ社会構造を正すことから始めなくてはならない。農林水産業は多かれ少なかれ地球環境に影響を及ぼしながら行われている産業のひとつ。無理なく無駄なく食料を届け、消費側も過不足なく食べきらなくてはならない。捨てるくらいなら、はじめから過剰に作るなということだし、余ったところから足りないところへ供給するなど(国内国外問わず)、不均衡を均すことから始めるべきではなかろうか。

 まもなく安部元総理大臣の国葬が執り行われ巨額の税金が使われる。昨年延期開催された東京オリンピックに関する贈収賄事件。相変わらずの政治的アピールや利権がらみの社会構造で、私利私欲の暴走がとまらない。お金はある所にはたくさんあり、ないところにはまったくない。世界は物価高・インフレで金融緩和政策に見切りをつけ金利上昇に舵を切る一方で、我が国の日銀は相変わらずのマイナス金利(超低金利)といった緩和政策を続け、景気の後退につながるから金利は上げませんとの一点張り。お陰で円安・ドル高が進行して留まる気配がない。輸出企業にとっては好都合かもしれないが、基本的に日本は輸入国だと思っているから(資材から工業製品・食料品に至るまで)、総合的にみて損または良くて損益トントンなのではないか?内需が拡大していた戦後から1960年代くらいまでは、国内向けの政策で良いかもしれないが、今のようなグローバル経済下において長引く日銀の金融緩和政策に私は反対である。円安ドル高で利益を上げている企業経済界の圧力でもあるのではないかと、そんな陰謀じみた疑いをもってしまうほど、日銀と政府の及び腰が腹立たしい。

ただ、こう言えるのには訳があって、ここ数年は金融機関からの借入が減り、多少なりともドル建てで決済する取引先(支払先)ができた社内事情もある。けれども仮に金利が上昇に転じたとしても、企業の運転資金や住宅などの個人ローンは、信用保証料や金利負担を助成するなどして援護できるはずだし、金利が上がれば、預金残高に利息がついてその安心感から消費が上向きになるかもしれない。金融機関も貸付金の金利収入が再び増えることで、顧客へ無駄にクレジットカード契約を頼んで手数料を取ったり、iDeCoや積立NISAを執拗に勧めて手数料収入を少しでも得ようと営業に躍起にならなくて済む。私が子供だったころ、正月にもらったお年玉を預けていた郵便貯金の通帳を見て、毎年利息で増えた預金残高に心躍ったものである。まぁ、こういった考え方も時代遅れなのかもしれないけれど。島国で持続可能な暮らしを細々とそれなりに幸せな暮らしを送ってゆくか、イノベーションが生まれる教育環境や社会風土にして世界に打って出る先進技術大国として再び成長国家となるか。いずれもバランスが必要なのは言うまでもないけれど。

 おっと、そろそろ肥料を溶かした給水タンクの液量がなくなるころなので、今日はこの辺で散水しながら悶々と思っていたことを吐き出すのをやめにしよう。文句ばかり言ったり、自身の不遇を人や組織のせいにしてても何も始まらない。自分の力が及ばないことへの固執は、労力と時間の無駄である(諦めも肝心)。石の上にも三年、これだと思ったものに情熱を燃やし(なければ見つける努力をし)、たとへ地味な仕事であっても、焦らず腐らずこつこつと努力を続け自分の役割と仕事に専念して今を生き、明日を切り開ていくことが大切である。

サイト・セレクションの重要性

黒とう病の初期症状
黒いぽつぽつ、黒とう病の初期症状。

ブドウ栽培において、微気候と斜面の向きが生産性に大きく影響することを痛感しています。上の写真は、黒とう病に罹患した初期の葉ですが、湿度が溜まりやすい畑地では殺菌剤の散布を2週間以上あけてしまった場合、降雨が続き高温多湿な環境下では、抑えられていた症状が爆発的に発症拡大してしまいます。2022年(今年)の道央では、8月お盆前からまとまった雨の降る日が多く、蒸しました。発症がぶり返した園地は、生育期間中に太平洋から湿気を含んだ南西の風が吹き抜けます。東西の丘に挟まれ、周囲の森林(広葉樹)や畑の南数百メートル先には沢があり、湿気が生じやすい条件がそろっているため、降雨で病原体が拡散し罹患率が高まる環境だったのです。

一方で、北西(西側)斜面に植えている同一品種は、黒とう病の発症はほとんど気にならないレベルであり、6月~7月までの期間は予防的に殺菌剤の散布(3~4回)は実施しているものの、同一時期(8月26日)の観察では黒とう病の発症は、ほとんどみられません。なぜ、こうも違うのか?それは、畑の条件(環境)が大きく異なるためと推察されます。

(北西・西斜面の特徴)

1.東側の畑とは丘を挟んで、
  北西(一部南西)方向に傾斜している。
2.畑の南側は、トド松の林が続き南西から吹いてくる湿った
  季節風をブロックしている。
3.トド松林は、広葉樹に比べ蒸散量が少なく畑周辺の空気が乾いている。
4.西日が当たり、地面や葉が乾燥する時間帯が長い。
5.斜面の上方部にあり、土壌に水分が溜まらない。

このように、湿度が低く日当たりが良好であり冷涼湿潤な季節風に当たりにくい環境が、防除の負担を減らし、樹の成長(新梢の伸びる勢い)を促しています。当たり前の常識のような内容ですが、身をもって実感したことで畑の土地選びというのは、とても大事なことが分かります。

ちなみに、このエリアは恐らく河床(または海)が隆起して、その上に火山灰が降り積もり、腐植と混ざって形成された黒ぼく土が土壌表層に分布します。河床ということは、粘土質で水を通さない層が比較的浅いところにあり、上層は火山性の土壌で水はけが良くても、根を深く張るには厳しい場所と断定しました。それでも、場所によってブドウは育つのですが、良し悪しは分かれます・・・。バックホーで2メートルほど垂直に掘ると、表層は黒ぼく土が15cm~40cm(火山性の玉石も混ざる)、その下は赤っぽい砂が混じる粘土層で場所によっては30cm下は粘土質の硬盤層(茶色~青みがかった粘土層)、2メートル下は帯水層らしく水が溜まっていました。

2018年から試験栽培をしてきたこの畑は、遅くとも来年秋には土地所有者へ明け渡さなくてはならない事情となり、今後の露地育苗や引き続きの栽培試験園地を探さなくてはなりません(当面は自社ハウスと敷地内の簡易露地栽培)。その場合も、このように畑の条件がとても重要であることを勉強させてもらいましたので、選定基準として大いに役立てていこうと思います。

今後、北海道がワイン産地として発展していくには、課題の一つとして良質な原料ブドウ生産量を増やすためにも、いかに条件のよい土地をワイナリーやブドウ栽培者(私のような育苗家含め)が利用できるかにあるのではないでしょうか。休耕地(遊休農地)はたくさんあっても、法人や新規就農者が実際に地権者から農地を取得したり畑の賃借契約を結ぶことは、容易ではありません。農地法の規制だったり、野菜などの畑作と異なり根を台地に深く張るブドウ樹は、オーナー(畑の貸主)から敬遠されることが多いのです。

ブドウ畑の生物多様性2

試験圃場にて、ブドウ苗木の整枝・剪定・誘引作業をしながら病害虫の有無なども見て回ります。もうすぐ8月、夏本番の季節となって参りますが、現れる虫の種類に段々と変化が見られるようになりました。前回の投稿でも、季節の移り変わりに伴い、草食昆虫から肉食系昆虫の推移が見られるということに、少し触れました。

7月28日の巡回では、主に肉食性昆虫を多く見かけるようになってきましたので、一部を紹介したいと思います。

サシガメ科の一種

これは、サシガメ科の一種のようで、大雑把にくくるといわゆるカメムシなのでしょうが、よく言われる吸汁害虫としてのカメムシではなく、他の昆虫の体液を吸う食性とのことです。

ナナホシテントウムシ
ナナホシテントウムシ

写真は、去年8月のものですがナナホシテントウムシも葉上で見かける頻度が高くなりました。アブラムシを食べることで有名です。これによく似たテントウムシだましという昆虫がおりますが、体の赤い部分がオレンジに近い色をしており、黒点もマダラ様でちょっと紛らわしいのですが、これは草食性なので葉を食べてしまいます。7月28日時点では、まだ姿を見かけませんが、そのうちやってくるでしょう。

トンボ
トンボ

オニヤンマ、その他小中型のトンボが飛び始めました。幼虫のヤゴから成虫になったトンボは一貫して肉食昆虫と認識しておりますが、先日もガか蝶を捕まえて、むしゃむしゃと食べておられました。ブドウの葉を著しく食害するマメコガネも、食べてくれれば有難いのですが、どうなんでしょう?気のせいかもしれませんが、コガネムシやカメムシの数が少し減ってきたように感じます・・・。

吸汁害虫と言って良いのか分かりませんが、アワフキムシというのもおります。よく雑草の茂みで直立性の草の茎が、白い泡で包まれているのを見たことがある方もいると思います。最初、私は誰がこんな機用に唾(つば)を吐きかけたんだ!と勘違いしましたが、アワフキムシの仕業であり、その泡は彼らの巣だったのです。

アワフキムシ科カメムシ目

ホソアワフキ(Philaenus spumarius)は、ピアス病の媒介昆虫として知られているようですが、CABIのオンラインデータベース(Invasive Species Compendium)によると幸い日本にはピアス病菌はまだ侵入繁殖していないようです。ですが、まだ取り立てて危惧する必要はないと言い切れるのか微妙なところではあります。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ピアス病は、蔓延すればブドウ・コーヒー・オリーブなどの果樹を枯死させてしまう、重要警戒病原菌と言えます。現在のところは、中米(メキシコやコスタリカ)・北米の暖かい地域(カリフォルニア州、フロリダ州、ジョージア州、ルイジアナ州、メリーランド州、ノースカロライナ州、テキサス州など)、ヨーロッパの一部(ドイツとスペイン)やアジアはイスラエルと台湾にとどまっています。

カリフォルニア大学デービス校では、ピアス病に耐性のある品種開発なども行われているようで、それだけ深刻であり、かつ危機意識の高さが伺えます。米国からブドウの枝や苗木を輸入する際、当然ながらこの病気を引き起こす細菌(Xylella fastidiosa)は、検疫対象の病原体となっており、日本の植物検疫は厳し過ぎるといった意見もある中で、逆にこの門の狭さゆえに海外から持ち込まれるこれらの病害虫を、最小限に食い止めているのかもしれません。なにせ、現地の圃場で1年間の検査、農務省(USDA)から検疫合格証明書(Phtosanitary Certificate)を発行してもらい、国内輸入後は農林水産省の植物防疫所で最低隔離検疫に1年を要しますから、とにかく首を長くして待たなくてはならいのです。

国(出荷元)によって検査の検出レベル(精度)や苗の品質管理が異なるようですが、もう少し現地の状況を鑑みて、定期的な病害虫検査が実施されている圃場では、該当する項目を免除したり、日本国内で行う検査と重複する場合は割愛するなど、輸入に関して労力と時間の節約になる措置をとることはできないのでしょうか。日本国内での検疫体制を整えれば、輸出国での検査負担を減らすことで輸入に関する交渉もスムーズに進むものと思われます。現在、日本政府は特別な場合を除き、輸入許可証の発行(Import Permit)を不要としています。その代りに、検疫合格証明書(Phytosanitary Certificate)を輸出国機関に対して求めており、輸入者はこの書類を提出しないと国内に入れることができません。様々な経緯で、このような体制になったのだと思いますが、引き締めるところと緩和する部分のバランスを見直して頂きたいのです。

一方で、国をまたぐ植物にはこんなに慎重であるにもかかわらず、人間はそうではく気軽に海外へ旅行・出張に行くことができる時代です。コロナウィルスが世界中に、しかもあっという間に広がったのも、なるほどうなずけます。

さて、ブドウ畑では6~7月中旬に草食昆虫、そして以後は肉食性昆虫が優勢となり葉の食害が比較的収まってきました。ガやチョウなどの幼虫(イモムシ)が成虫になり、葉自体に厚みが出てきて、かじられにくくなったというのもあるでしょう。殺虫剤(主成分がアセタミプリドなど)をスポット的に散布したりもしましたが、肉食性昆虫が草食昆虫を捕食することで生存数をうまく抑えこんでいる。ということであれば、自然界というのは実に上手くできているものだなぁと、つくづく感心してしまいます。

ブドウ畑の生物多様性

 今年は栽培試験を継続しながら、畑で見られる野草や昆虫類を観察している。あえて雑草、病害虫などと表現しなかったのが、ミソである。そしてまた、試験場と将来的に原木園を兼ねる圃場では、対象品種における適切な防除回数を見極める試験にも取り組み始めた。本圃の気候風土と病害に罹患する度合いの分かれ目を知る、いわばブドウの樹が将来に渡って主要な病害に侵されることなく、果実を実らせ健全な苗木を生産するための損益分岐点はどこなのかという探りである。

7月19日に、7月2回目の防除すなわち農薬の散布(殺菌剤・殺虫剤)を済ませてきた。5月末・6月中下旬・7月上旬・7月中旬の累計4回目である。(黒糖病と褐斑病対策としては、5月末を6月上旬にずらして殺菌剤を撒くべきでもあった。)ちなみに、昨年は萌芽・展葉初期に1回、マンゼブ系の殺菌剤とカスミカメ対策に登録農薬を散布したのみで甚大な被害もなく、健全に育った区画もある。しかしながら、今年は昨年の干ばつと打って変わって6月の降雨が多く、カビ由来の病害が多く発生すると見込んで防除は入念に行っている。

 数年前、苗木の植え付け直前に、ロータリー掛けしてもらった以外は、ほぼ不耕起草生栽培ということになるのだけれど、そのお陰で植生に多様性が出てきた。いわるゆ耕地雑草といわれる、ギシギシなんかも生えているんだけれど、イネ科雑草なども含めて刈り払い機で定期的に短く刈り込んでいると、結構色んな草が生えてくることに気づく。タネを蒔いた白クローバー、エン麦、チモシー以外に、元々自生または帰化していたであろうキク科の草本、タンポポ、ナズナ(ペンペン草)、ヒメジョオンや一見イラクサと勘違いしてしまうナギナタコウジュが共生している。これらは、元々畑として耕されていた場所で主に見られる。

一方で、生食用ブドウが育てられた後、しばらく放棄地となっていた場所には、白クローバー主体に、時折赤クローバー、ドクダミ、カモガヤ、ジョンソングラス(セイバンモロコシ)、メマツヨイグサ、スコルゾネロイデス・オータムナリス(西洋タンポポのようでもある)、子供の頃、貧乏草呼ばわれされていたヒメジョオンが生えている。ウドもポツンと生えていて、そのうち葉を天ぷらにして食べてみようかと、たくらんでいる。どうやら、土に湿り気のあるところ、そうでないところをそれぞれが自分に合った居場所として見つけ、懸命に生き延びようとしているかのように思えた。

この場所は数年前まで、オオアワダチソウが優勢で、耕地の全面を背丈ほどの高さで覆っており荒れ地そのものだった。どうしたものかと思案していたら、オオアワダチソウの駆除方法を、(株)ドーコンさんのWebサイト上で発見したので、それを参考に草丈10cm以下に毎年刈込みを行ってきた。結果、それらは姿を消しつつあり、上述のような多様な草が生えだしたのである。世の中便利になったもので、スマホのアプリで植物認識や昆虫判別するものを見つけ、面白がって写真を撮ってはAI(人工知能)に教えてもらっている。たまにおかしな結果を表示するから、完全ではなさそうだが。例えば、去年切り倒した広葉樹。判定1回目は、クルミ(ブラック・ウォルナット)と認識したが、もう一回違う角度から葉などをスキャンしたら、ウルシかよ!かぶれるところやないか、アホ!と、一人むなしく、畑のど真ん中で、額の汗をぬぐいながらツッコミを入れたりしている。

昆虫類も、益虫なのか害虫なのかある程度は、判別してくれる。これまた便利で、6月はジョウカイボンという肉食性の虫と、草食の毛虫・アオムシが主に見られたが、7月に入ってくるとナナホシテントウムシが現れる。コメツキムシ、アワフキムシ、、マメコガネ、甲羅がこげ茶色で横に縞が入っているセマダラコガネ、小ぶりなカメムシやカミキリムシ、バッタなどが出現し、葉を食べたり樹液を吸うなどの加害昆虫も増えてくる。ムシヒキアブと認識されたアブも飛び回りだした。昨日は、脱皮したセミの抜け殻がブドウの葉裏にぴたっとくっついていて、驚いた。もっとも、それら虫達は、自身が加害昆虫であるという認識など無いだろうし、生きるために食べたり汁を吸っているだけのことであり、害虫益虫という解釈は、人間中心に見た場合の視点に過ぎない。

しかしながら自称種苗家としては、ウィルスを媒介する吸汁害虫として、カメムシ、ダニやアブラムシはどうしても駆除または遠ざけておかねばならない。北海道でカメムシが大量発生するのは、天敵とされる大型のカマキリが本州のように生息できない理由からだろうか。一方で、他の昆虫を食べる肉食系ムシ(ジョウカイボン、ナナホシテントウ、アブ、ハチ類)もいるわけで、鳥類も含めてブドウの葉や枝を食害する虫を食べてくれることで、過度な防除をしなくてもある程度は害虫による加害を食い止めてくれるのではなかろうか。

だとすれば、多様な昆虫が生息するためには好みのエサとなる多種多様な葉っぱがなくてはならない。たとえば、グラウンドカバーに芝など単一のイネ科だけを植えてしまうと、見た目はキレイかもしれないが、イネ科を好んで食べる虫しか来ない。シバツトガや青虫くらいしか思いつかないけれど・・・。広葉雑草が混じることで多様な虫が集まり(ブドウの葉だけが、草食昆虫のターゲットになることを抑制する)、それを捕食する虫もやってきて何かが異常繁殖することなくバランスが取れる。逆に、草が全く生えていなければ、栽培作物がムシの標的になることは明らかでもあるし、大雨や風で表土が流亡する事態を招く。

 というわけで、殺虫剤と殺菌剤は使用するのだけれど、今のところ除草剤の散布や過度な全面耕起はしないことにしている。また、カメムシやカミキリムシ、ダニ等に照準をしぼり、背負い式噴霧器でスポット散布に限り防除を行うことで、他の有益昆虫を出来る限り生息させてあげたい。スピードスプレイヤーなどで大量散布してしまえば、ありとあらゆる昆虫を殺傷し、土壌中の有用微生物群までも失ってしまうだろう。糸状菌の一種である菌根菌(カビ)は、リン酸をはじめとする養分を根が吸収するために大事な役割を果たすと言われており、私はこの生物学的メカニズムに関心を寄せている。

農薬散布
背負い式噴霧器での農薬散布。葉だけでなく樹幹の地際付近までかけることで、テッポウムシやカイガラムシの食害から守る。カイガラムシはリーフロールウィルスの媒介昆虫。苗木生産圃場としては、ご遠慮願いたい来訪者だ。
根は枯らさない除草剤を撒くことも検討したが、今のところ株元は手除草で頑張る。

ワイン用のブドウ品種に関して、ここ10年~20年のワイナリー建設ラッシュと産地の気候特性に十分応じることのできる優良品種が日本には流通しておらず、言い過ぎだとは思うけれど、ほぼ皆無に等しいと言って良い。というのは、現在苗木業者から入手できる品種が、そのポテンシャルを100%に近い状態で発揮できるエリアというのは、国内(北海道内)でも地域が限られているからだ。耐寒性や糖度不足に悩むブドウ生産者(ヴィニュロン)も、少なくないと感じている。酒質の向上・耐寒性・耐病性を目的とした品種改良は、一部の国内品種開発研究機関や育種家を除きドイツや北米から何十年も遅れをとっている。これは、ワイン醸造や歴史的文化の違い、今までそれに心血を注ぐ必要性が無かったことに起因していることも承知している。
いくら有効積算温度がフランスのボルドーやシャンパーニュ、はたまたアルザス地方と同等(リージョン1や2※)だからと言ったところで、西岸海洋性気候や地中海性気候のそれらEU諸国の地域と比べて、日本は基本的にモンスーン気候である。温暖湿潤~冷涼湿潤気候帯に属し、湿度が高く夏季の雨量は多く冬寒い。マイルドなヨーロッパに比べて季節のメリハリが強いのだ。南北に長い日本において、地域ごとに気候や積算温度の違いなど栽培環境が極端というか大きく異なるので、品種選びや育種もそれに応じなくては、本当に適した品種というものに出会うことができない。仕立て方も、新梢が上に伸びるのか下へ垂れ下がる特性があるかに応じて、仕立て方を変える必要がある。特に北海道の場合には積雪の量によって越冬させるスタイルが、地域ごとに今後は多様化してゆくと思われる。雪の下に樹幹を伏せるスタイルと、耐寒性品種が今後普及することにより、枝を寝かせる必要がなくなり垂直に樹幹を保ったまま冬を越せるようになるだろう。場合によっては、雪の重みで枝折れを防ぐための工夫も必要だが。

 今後は、化学農薬を上手に使いながらどこまで、Regenerative(再生可能)、Low Intervention(出来る限り、介入を避ける)をキーワードとした農法が実現可能なのだろうか。耐寒性・耐病性品種の導入普及はもちろんだが、時代の潮流で、菌に耐性のある遺伝子をもつ品種を掛け合わせたり、雨で裂果しない果皮などの品種改良が急務だ。天敵農薬、微生物農薬、非グリホサート系の除草剤開発も今後の必然的なトレンドになっていくと思われる。

※カリフォルニア大学ディヴィス校博士のウィンクラ―&アメリン両氏が、カリフォルニア州において、どこにどんなブドウ品種を植えたら良いかという基準策定を目的に作られたものであり、積算温度による区分については参考にはなるが、対称的に多雨多湿で冬が寒い日本の気候下において、それをそのまま適用することは、安易であると考える。耐寒性を示すハーディネスゾーンの概念も含まれていないので、この指標のみを信じて植えてみた結果、冬を越せずに枯死するケースが多く、殺菌剤の散布を怠ればカビ系の病気にいとも簡単にやられてしまう。

海外品種を植えるにしても、現在はシャルドネやピノノワールといった主要品種ですら、これらの栽培上必要な情報が不足しており、耐寒性や病害虫の罹患指数などが国内ではまともに示されていない。例えば、ドイツのドルンフェルダーという赤ワイン品種がある。耐寒性を示すUSDAハーディネスは、6以上。最近は温暖化で少しづつ変化していると思われるが、例えば、札幌市は6bなので、ギリギリ越冬できることになる。(数値が小さいほど、冬が寒いということになり、品種にタグ付けされた数値が低いほど、耐寒性が強く、その数値が示すエリアでの越冬が可能ということになる)。耐病性については、ベト病、うどんこ病を非常に発症しやすいが、ボトリティス菌が原因の灰色カビ病には、ある程度控えめな罹患率となる、などといった具合だ。

余市や仁木町は、現在ハーディネスゾーンは、6または7くらいに位置しているかもしれない。雪の下に樹を埋もれさせることができる地域では、ゾーンの数値が上昇するばずなので、より有利となる。白ワイン用のリースリングなども、越冬可能なのはゾーン6のエリアで、有効積算温度は、1400℃が理想とされている。

ぶどう畑で見かける虫

ジョウカイボン科の甲虫

この畑でも、御多分にもれずテッポウムシ(ここでは、カミキリ虫やゾウムシの幼虫と定義しよう)の被害がある。7月以降、ぶどう樹の根元付近からおがくずが出ていると思ったら、枝の髄がかじられ、横穴を開けられる始末。

畑でよく見かける上の写真の虫は、カミキリ虫のように見えるが、そうではなかった。通称、ジョウカイボンと呼ばれ、ホタルの仲間だそうだ。食性も肉食で、丈夫な下顎で小さい虫などを捕食するという。つまり、益虫である。もしも、ウィルスを媒介するダニやアブラムシを食べてくれるのならば、イチゴ苗のハウスで飼いたいくらいだ。ついでに、葉っぱを食べちゃう芋虫も、平らげていただけると有難い!

あっ、そういえばこないだハウスの通路で、アリが2匹力をあわせて生きたアオムシを、連行するかのように運んでいた。そのアオムシは、多分ブトウの苗木の葉を食べていた犯人だ。弱肉強食の自然界は、人間が手を加えなくても、実にうまく機能している。

シカの食害

無惨にもかじられた新芽

今年は、ぶどう畑に害獣避けの超音波発生器を設置するのを失念していた。てっきり、チョッキリ虫にやられたかと思いきや、新梢ではない固い枝先が咀嚼されたものも発見したので、シカによる食害と判明した。後日、蹄の跡が地面に残っていたので、そういうことであった。超音波発生器の設置後も、被害が収まらず従来の電気柵を張り巡らすことに。エリアによっては、かなりの新梢を食べられてしまったので、今年樹幹作りが完成する予定が、1年遅れることになりそうだ。実に切ない気持ちになったが、まぁ、起きてしまったことは仕方ない。

ちなみに、例年この畑でチョッキリ虫が現れるのは6月下旬から7月の始めにかけてなので、随分と被害が出る時期が早いものだなぁと思っていた。

凍害、病害、虫の害など栽培者を悩ます事がらは、圃場によって異なると思われるが、ここでは、もっぱらシカ対策が最重要事項になりそうである。

ここ数年は、近隣でメガソーラーの建設により原野が切り開かれていた。その工事騒音に伴い、シカが出没しなかったのかもしれない。一時、クマが出たこともあったから、それも影響していたか?なので、ちょっと、油断していたのである。

それにしても、再生可能エネルギーの一つとしての太陽光発電。ある電力会社の説明文には、「発電に化石燃料を使用しないため、二酸化炭素の排出を抑制できます」と書いてある。だけどさ、隣りで建設拡張中のメガソーラーは、森林を伐採しまくって、地面を剥き出し丸裸にしてまでソーラーパネルを設置している。炭酸同化作用のある樹々をなぎ倒し、炭素が固定されていた森林の土壌がほじくり返されている。虫や鳥、シカやネズミなども生息環境を奪われたことだろう。原子力発電に比べれば、危険性は格段に低いかもしれない。しかし、何が二酸化炭素の排出抑制なのか?馬鹿じゃないのかと言ってやりたい。

ソーラーパネルを新規に設置する場合は、条例ですでに開かれた他に利用価値のない土地、建物の屋上などに限定し、森林を新たに伐採してまで建設を進めるような事業者には建築許可申請を出さないようにすべきである。森は、蒸散による大気の冷却効果もある。政府は、温暖化対策がどうのこうのとスローガンを掲げているが、その足下で貴重な資源が失われている。そして北広島市よ、今後は市街化調整区域での開発をこれ以上容認するべきでない。札幌近郊で、今までこれだけの里山が残されているのは、奇跡とも言える。しかし、特に近年は開発が進み、林野部が大規模に失われている。街が活性化するのは、好ましいことだけど、人口減少時代にこれ以上、市街化や工業団地の拡大は、不要ではなかろうか。納税事業者として、改めて強く抗議する。一体どれだけの景観が損なわれたというのか。こうなってくると、最後の手段としては、手付かずの林野部を保護するために、個人所有の土地に関しては買い上げて永久保存するしかない。そうしたら、多少はクマもシカも生活圏を追われることもなく、出没しなくなるだろう。私財を投じ、基金創設だって考える必要が出てくる。

市内ど真ん中に、野幌原始林があり竹山高原温泉、輪厚、仁別・島松から空沼岳、札幌岳、恵庭岳、漁岳など支笏洞爺国定公園へ続くルート。札幌方面へは、清田区有明へ繋がり、滝のすずらん国立公園にも通じる広いエリア一体を、なんなら国立公園指定するくらいの価値がある。この辺も、裾野にカントリークラブがいくつかあるものの、広大な陸上自衛隊の演習場があるから、現在も開発の手から逃れることができているのだろう。こうなってくると市町村をまたぐから、知事クラスの権限が必要になってくる。これくらいのスケールで物事は考えるべきで、2030年に札幌に再び冬季五輪を召致するなど、全くもって論外だ。貴重な血税は、他にも資するべきものがあるはずだ。日本ハムファイターズが使用しなくなってしまった札幌ドームの維持管理費や活用はどうするのか?後世にツケを回す札幌市政にも文句がある。もっと長い目で俯瞰できる知性と良識ある経営感覚に優れたリーダーは、いないものだろうか。

ところで、ソーラーパネルのリサイクル化はどれほど可能な状況なのだろうか?いずれ大量の産業廃棄物として丸々埋め立て処分なんていうことになれば、再生可能エネルギーなどと言えたモノではない。シカの食害から、随分と飛躍した話しをしてしまった・・・

菌根菌の香り

根の周りにびっしりと張り付く、菌根菌の芳(かぐわ)しき香りを味わったことは、あるだろうか?

地上部が無くても、根だけが伸びて生き延びる驚異的な生命力。

温室では、人工培土でぶどう苗木の栽培床を作っているのだけれども、苗木を掘り取る際にどうしても千切れて、土壌中に取り残されてしまう根っこがある。4月上旬、その根っこを葡萄の落ち葉や完熟した鶏糞、牛糞、バーク堆肥、菜種油カスなどと一緒に培土にすき込む。それらは、含まれる肥料成分と残効の度合いも異なるので、目的に合わせてブレンドする。散水もして、微生物が活性化するように適度な水分を保ちながら、たまに切り返したりして、放置すること1〜2ヶ月。土壌を発酵させるこの期間は、実は紫外線による培地の日光消毒も兼ねている。

チーズカビのような香りの菌根菌

2ヶ月ほどして、定植の時期がやって来る頃には、どうやら根の周りに共生する菌根菌はとても芳醇な香りを放っていた。糸状菌の一種なのでしょうか、粉状にまぶされたように見える菌類を、根からこそぎ取るように指先で擦る。すると、まるで熟成したチーズカビのような香りを味わうことができた。嗅覚からは、塩気すら感じるほど、まさにそれはチーズそのものを食べているような錯覚に陥ったのであった。実際に根をかじって食べたわけではなく、鼻で味わったのです。

根の養分吸収にとって、この菌根菌の果たす役割はとても大きい。(以前私は、菌根菌とはマメ科の根に生息して、窒素固定だけをするものと認識していたので、せっせとクローバーやヘアリーベッチの種を蒔いたものだった。)根が吸収できるリン酸の量は、微量でありやたらと施肥をすればよいというものでない。特に今年は、世界情勢による化学肥料の値上がりが、尋常じゃない。肥料成分うんぬんに頼る前に、土中のリン酸などの養分吸収や根の成長、耐病性にも寄与する極めて重要な根と菌根菌が織りなす根圏のWin-Winコラボな世界を今一度、理解し見直してはどうでしょうか?土壌菌類、土壌微生物学はとても奥が深く、非常に興味深い分野です。

2022年は、緑肥、発酵鶏糞、牛糞、ボカシ肥料などが改めて注目されるのではと思います。

遅い根雪

ブドウを植えている畑にて、ようやく枝の剪定と片付けに取り掛かった。12月も9日だというのに、積雪がゼロ。昼間の気温は5℃で、この時期にしては気温高めである。日中、陽射しがあると防寒着を脱ぎたくなるほど暖かい。遠くの山は雪化粧しているけれど、平地はまだ晩秋のような光景だ。今冬はラニーニャ現象の影響を受けているとのことで、偏西風が蛇行してシベリアの寒気が下りてくると、低温と大雪に見舞われる地域、逆に太平洋高気圧に覆われて、暖冬・少雪のところとに分かれるようである。気圧配置によっては、大雪になるかもしれないが、今年の冬も、何とも先が読めない天気になりそうだ。下のイラストは極端かもしれないけども、どうやらこういうことらしい。

北海道をはじめとする積雪寒冷地で怖いのは、耐寒性のない植物(作物)が、例年は雪の布団に覆われて越冬する場合、今年のように初冬が少雪傾向で積雪で覆われていない状態。上の図で示す偏西風の蛇行バランスが、何らかの要因で崩れた場合に寒気(寒波)がいきなりやってきて、例えばマイナス20℃以下になってしまった場合に耐寒性に劣る永年作物は、凍害に遭ってしまうのである。気候変動時代においては、2021年夏の高温少雨(地域によっては多雨)、旱魃、そして暖冬・少雪・大雪・寒波など極端な気象条件に耐えうる品種の選定、栽培管理が今後は極めて重要となってくるであろう。