Plant Space Museum

 Plant Space Museum(P.S.M.)は、Web上のボタニカル・ポップアップ・ミュージアムでP.S.V.のサブコンテンツという位置づけです。趣味栽培家の視点で、アガベとおもとの植物学的特徴や芸術的な葉姿にフォーカスし、その魅力に迫ります(予定)。
2023年6月11日

アガベ夕映
信楽焼オモト鉢に植替え中の台湾産アガベ、夕映(別名ソーラーエクリプス)。

夫婦獅子
おもとの夫婦獅子を楽焼錦鉢に植える。(3.5号鉢)

 陰と陽、対照的な環境下で育つ植物である。主にメキシコ、アメリカ合衆国のカリフォルニア州、ネバダ州南部やユタ州が原産で、日差しが強く乾燥した土地で生き延びる術を身に着けたアガベ。一方で原種が中国、朝鮮半島、日本の本州東北以南に自生し、半日蔭で適湿な明るい林床地に順応したおもと(オモト、万年青)は、アガベに比べれば水をより多く求める。おもとは400年以上続く日本の伝統園芸を代表する植物の一つである。

 どちらも植物分類学上はキジカクシ科に属しているからなのか、根は同じような形状である。wikipediaや図鑑等で調べてみるとキジカクシ目、キジカクシ科、リュウゼツラン亜科、リュウゼツラン属という分類で、学名Agaveがアガベ(和名:竜舌蘭)。キジカクシ科までは一緒で、スズラン亜科のオモト属がおもと。いずれも被子植物の単子葉類である。

 このふたつの植物は、その見た目や生態が実に面白く興味深いので、例えばホームセンターの園芸コーナーや専門業者さんのオンラインショップ等で、一鉢買って育て始めると収集に歯止めがかからなくなり、俗に言う「沼にハマる」という境地に至る趣味者が急増する点でも共通している。自己満足の世界と言われればそれまでだが、楽しいと感じられるものが一つでも多くあれば、人生それで良いではないか。

 ひとつ付け加えるとしたら、アガベやおもと栽培は空きスペースを活用した大気中の二酸化炭素削減活動だ。化石燃料の消費をまったくせずに生活をすることが難しい今、大気圏に放出されたCO2を少しでも吸収、炭素固定を行う。これが地球の温暖化防止にどれほど役立つのか分からない。焼け石に水かもしれないけれど、オフィスや住居の窓辺を利用してアガベやおもとを置いてみる。コンクリートやアスファルトで埋め尽くされてしまった住宅街、工業団地の建物内でも居場所を見つけてあげることができれば、草姿を乱すことなく生き生きと育つことが分かった。気軽に始められるインドア・グリーンによる緑化は、社会に貢献する事業活動とも言えないだろうか。

 当所ではインドアグリーンによる二酸化炭素削減活動という定義をしているため、光熱費を余計にかけてまで栽培環境を作り出すことは避けなくてはいけない。例えば、アガベの場合、電気代があまりかからないという理由で、LED照明による電照栽培をするとしよう。生育に必要な光量を得るのにかかわる発電コストもしかり環境負荷となるCO2排出量が、アガベの吸収するそれよりも上回るようであれば、ちょいとそれはいただけない。あくまで自然光での栽培に限り室内緑化に取り組んでいる。